糸満で農家をしながら映画監督としても活躍する《中川陽介さん》

糸満で農家をしながら映画監督としても活躍する《中川陽介さん》

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歴史文化

放送日:2024.12.16 ~2024.12.20

初回投稿日:2024.12.24
 最終更新日:2024.12.24

最終更新日:2024.12.24

糸満で農家をしながら映画監督としても活躍する《中川陽介さん》 クリップする

東京都出身で20数年前には、日本映画界のメジャーシーンで活躍していた中川陽介(なかがわ・ようすけ)さん。脚本を書き監督を務めた作品は国際的に評価され、新作には有名俳優が出演するなど勢い付きますが、「やり切った」気持ちになり映画界を離れることに。新たなWell-beingを求め、映画のロケ地として度々訪れていた沖縄に移住します。

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移住して畑を耕すハルサーに転身

第二の人生として農業を営むことを決意した中川さんは、技術や知識を学ぶために2019年に沖縄県立農業大学に入学。卒業後は糸満市の中川農園で野菜作りを続けています。

糸満市にある中川さんの農園
糸満市にある中川さんの農園

「街の近くで農業ができるのが沖縄だと思っています。暖かい気候も好きなんです」と中川さん。沖縄の風土は魅力的だと語ります。

農作業をする中川さん「手を掛けるだけ良い作物ができる」と作業に勤しみます

 

映画製作と農業、全く別世界の仕事だと思えますがどんな違いがあるのでしょう。

「映画は自分が傑作だと思っても他人が評価するもの。でも農業は環境を良くするなど頑張れば、しっかり作物が実る。努力が目に見える農業は楽しい仕事だと思います」とのこと。

 

トマトにインゲン、丹念に育てた野菜を「おいしい」と食べてくれる人がいる。そんな日常に喜びを感じているそうです。

農作業をする中川さん

映画を撮影するために訪れていた沖縄に、今は暮らしています

おいしい野菜を作るために

50代になるころ、第二の人生として沖縄で農家になることを選択し、行動に移した中川さん。これまで農家を目指そうと意識をしたり、経験がつながることなどがあったりしたのでしょうか。

ビニールハウスで農作業をする人

農作業を通して喜びも苦労も経験します

 

寝る前に「明日はこれをやろう、明後日はあの作業を」など、これからやることがイメージできると幸せを感じる中川さん。

 

「子どものころからプラモデル作りが好きで、色を塗ったり接着したりという段取りを考えていました」と語ります。次にやるべきことを頭の中で組み立てることや、実行することに達成感を覚えるのですね。やるべきことが常にある農作業を楽しみながら続け、充実した日々を過ごしています。


映画監督の中川さん

仕事も趣味も「次の段取りを考える」のが好きとのことです

 

農家の時の中川さんにとって一番の相談相手は、「JAおきなわ」の営農指導員・平安名修司さん。農家になって15年が過ぎた中川さんについて「ノウハウを知った上でハウスを増やしている」と語り、やる気にあふれている姿が映っているようです。

 

「野菜をどんどん出荷してほしい」と期待する平安名さんと、応えたい気持ちの中川さん。指導を受け情報交換をしながら、良い協力関係が続いていきます。


JAおきなわ営農指導員・平安名さんとのコミュニケーション

JAおきなわ営農指導員・平安名さんとのコミュニケーションも欠かせません

取り戻した映画作りの情熱

東京から沖縄に移住。糸満市で農業を生業にしている中川さんは、自然を相手に生活する内にストレスのないシンプルな時間を過ごすようになります。そして農閑期には小説を書き、映画の脚本も書くように。農家になって10年近く過ぎたころに地元の糸満市を舞台にした短編映画を製作し、2023年には長編監督作品『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』を発表しました。

 

農作業をする人

農業という生業があるからこそできる「映画作り」

 

やり尽くした思いで一旦は離れた映画界でしたが、Well-beingでいられる場所を見つけて身を置き、本来の自分を取り戻していったのですね。

 

銀天街(沖縄市照屋)の街おこしをテーマにした『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』について、「現地を取材した中で脚本が生まれた」など、最初は違うストーリーを構想していたと中川さんの口から製作秘話が語られます。


映画の撮影をする人々

『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』は銀天街の街おこしをテーマにした映画

 

「車が入って来られないような路地が魅力」と銀天街を歩き、以前から沖縄市はアジアの雰囲気にアメリカのテイストが加わった市全体の街並みや風景が「チャンプルー文化のひとつ」として映り、映画ロケ地の候補として考えていたとも明かします。

 

次回作に向けた取り組みも始まり、中川さんの映画作りへの情熱はますます高まっているようです。


銀天街を歩く人々

映画『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』出演者・上門みきさんと銀天街を歩く中川さん

 

銀天街を歩く人々

撮影当時を思い出し、歩きながら銀天街の魅力を語る中川さんと上門さん

身近な人との共同作業で生まれるWell-being

昨年・2023年に公開した『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』は、中川さんにとって実に14年ぶりの監督作品になる映画でした。関係者の上門みきさん(俳優)、砂川幸太さん(カメラマン)と一緒に撮影当時を思い出してもらいました。

 

沖縄市銀天街の「cafe NooR」

沖縄市銀天街の「cafe NooR」で、映画『コザママ♪』について思い出トーク

 

映画も演劇も監督の空気が現場に出ると考える上門さんは、「中川監督の現場はとてもあたたかい」と笑顔。映画の撮影は初めてだったという砂川さんは「何がなんだか分からずやっていましたので、いろいろ教えていただきました」と話します。


左から俳優の上門みきさん、カメラマンの砂川幸太さん、そして中川陽介監督

左から俳優の上門みきさん、カメラマンの砂川幸太さん、そして中川陽介監督

 

『コザママ♪』の前作となる短編映画『やくそく』(2021年製作)で中川さんは、自分が住む糸満の景色や目にする光景を映し出しています。

 

JA糸満支店で上映会を開いた時には「毎日見ているけど、これが映画になるとは思わなかった」と農家の方たちは驚き、営農指導員の平安名さんは「普段は農家さんとして関わっている中川さんですが、映画を見てすごい人なんだとビックリしました」とほほ笑みます。


糸満市が舞台、戦争を生き抜き農家として暮らす女性が主役の短編映画『やくそく』

糸満市が舞台、戦争を生き抜き農家として暮らす女性が主役の短編映画『やくそく』

 

あたたかな現場の中で飾らない日常のシーンを撮影。中川さんの監督作品は関わる身近な人たちに新鮮な発見など気付きを与え、笑顔を引き出すWell-beingなパワーにあふれているようです。

ライフスタイルは農業あっての映画製作

「農作業も映画作りも、お客さまに良いものを届ける意味では同じ作業ですよ」とほほ笑みながら話す中川さん。出荷したインゲンやトマトを購入する人に「おいしい」「探して買っている」など声を掛けられる、うれしい交流もあるそうです。


丹念に育てる「中川農園」のトマトはおいしいと評判

丹念に育てる「中川農園」のトマトはおいしいと評判

 

映画関係者との交流も楽しみ、『コザママ♪』関係者に次回作の構想を話す場面も。『夢で会えたら』いうタイトルで撮る予定の次回作は『やくそく』からの流れで着想した作品で、「亡くなった人と生きている人との距離が近い沖縄に住んでいるからこそ生まれた作品」とのことです。

 

モニターチェックをする男性

「中川監督の撮影現場はあたたかい」というのが関係者のコメント

 

「農業をやっている時は映画のことは考えません。農作業中に他のことを考えると怪我をしてしまいますから。半年以上の日々は農家としての生活に集中し、映画から離れるのは良いことだと思っています」と自身がWell-beingでいられるライフスタイルを確立。今後もそのスタイルを継続していくのでしょう。農業が基盤にあるからこそできる映画製作なのですね。


農作業中は、真剣に作物に向き合う

農作業中は、真剣に作物に向き合います

 

映画監督そして農家。2つの仕事に情熱を注ぎ、自分自身も関わる人も幸せにする中川陽介さん。Well-beingな姿にこれからも注目です。

 

映画監督の中川さん

農家でいられるからこそ、できる映画作り


映画監督の中川さん

農家と映画監督の両立が、中川陽介さんと周りの人々のWell-beingです

 

 

<インフォメーション>

【映画『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』公式サイト】

沖縄CLIP編集部

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