思い出を本でつなぐ《思い出書店》

思い出を本でつなぐ《思い出書店》

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歴史文化

放送日:2025.02.24 ~2025.02.28

初回投稿日:2025.03.04
 最終更新日:2025.03.04

最終更新日:2025.03.04

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しまんちゅ旅はじめました

思い出書店」の本拠地、名護市のコミュニティパーク「nagonova」

「思い出書店」の本拠地、名護市のコミュニティパーク「nagonova」

 

「思い出書店」とは、誰かと誰かの思い出を交換する古本屋さん。店舗は持たず、名護市のコミュニティパーク「nagonova」を本拠地に、カフェやセレクトショップなど、県内外に6箇所の拠点があります。

具体的には、各地の思い出書店に並ぶ誰かの思い出が綴られた本を、LINEアプリを使って交換する仕組みです。


思い出書店を立ち上げた森石豊さん
思い出書店を立ち上げた森石豊さんは、名護で「スタジオユリグラフ」という会社を営んでいます

きっかけは名護に古書店がなかったこと

この仕組みを考えたのは、メディアの企画や制作などを手がける森石豊さん。

 

数年前、名護に移住した当時、街には書店が少なく、古書店がなかったことを寂しく思い、コミュニティパークで開催したイベントで、古本屋を出店。

自身をブックソムリエと称し、お客さんから聞き出す思い出と、400冊ほどのストックの中から、おすすめをマッチングする「思い出書店」と名付けたその企画は大好評。一冊すべて500円だったのに、森石さんの思い出に感動したからと、10000円の値をつけてくれた人もいたそうです。

「誰かの個人的な思い出が、金銭的価値以上になることがある、はっとしましたね。このやりとりって、誰かをHAPPYにできるんじゃないか? もっと広げる意味があるなら、より多くの思い出を共有できる仕組みづくりが必要だと思いました」と、当時を振り返る森石さん。


帯に思い出が綴られた本がずらりと並びます

nagonovaの書棚には、帯に思い出が綴られた本がずらりと並びます

思いに共感した仲間が集まった

森石さんがよく利用していた名護のコミュニティパークには、旅人やアーティスト、海外とリモートで仕事をする人、学生など、さまざまな世代の人々が集まり、情報交換の拠点となっていました。

森石さんから思い出書店のアイデアを聞いた水野拓海さんは、

「とても素晴らしい考えだと思いました。社会的にいいこととされる評価はあっても、お金にならないとかの理由で、諦めてしまっていることもたくさんあると思うんですけど、思い出書店の誰かと誰かの思い出を本で交換する、というコンセプトは、本と気軽に触れ合える場所を生み出せる、可能性があります。

 

業界的にも紙媒体や本がなくなり、町からも書店が消えつつある今こそ、思い出書店には、しなやかな力があるんじゃないかと思います」


水野拓海さん

「思い出書店は、流れ着いたボトルレターのようなものですね」と、水野拓海さん

目に見えない感動をアプリでつなぐ

思い出書店の本のやりとりは、水野さんが開発したLINEアプリを使って行います。

帯にはブックナンバーとQRコードがあり、LINEで読み取ると、帯に思い出を綴った本を、「寄付する」、「交換する」、「借りる」、「自分の本」という項目に分かれ、簡単に操作できます。

また、自分の本が誰の手に渡ったか、誰に借りられているか、思い出検索でヒットした本が、どこの拠点にあるかなども確認できます。

森石さんはいいます。

「思い出書店では、数字で価値を表示しません。いいね、はないし、閲覧数や交換回数のランキングもありません。

僕たちは、この仕組みを丁寧に続けていくことを大切にしたい。普段手に取らないようなジャンルの本だったのに、気に入って新書で書い直した、という話も聞きます。そういうのがめちゃくちゃうれしいです」


パソコンのモニター

LINEを活用したアプリだから、幅広い年齢層にも受け入れられやすい

思い出を綴った本をアプリで管理し、交換する仕組み

思い出を綴った本をアプリで管理し、交換する仕組みは「2024 グッドデザインアワード」を受賞しました

 

思い出書店スタッフの米盛光織さんは名護市出身。昔から本が大好きな米盛さんですが、名護に書店が少ないのを寂しく思っていたところ、nagonova拠点でのブックナイトというイベントを知り、毎回参加するうちに、思い出書店のスタッフに。現在はその普及に向けて活動中です。

 
米盛光織さんは「名護を思い出書店のモデルタウンにしたい」と話します

米盛光織さんは「名護を思い出書店のモデルタウンにしたい」と話します

 

思い出書店が目指す世界観が詰まった一冊

思い出書店が目指す世界観が詰まった一冊。「人と人とのつながりの大切さを教えてくれます」と米盛さん

名護市東江のセレクトショップ「余白に愛を」オーナーの金城聖華さん
思い出拠点の拠点、名護市東江のセレクトショップ「余白に愛を」オーナーの金城聖華さん。「知らない誰かと私の思い出を交換できるのは素敵。なかなか本を手放せない性格なんですけどね(笑)」

新しく思い出の拠点となった宜野湾市大山の焼きドーナツ「HYGGE」店主の石田環さん
新しく思い出の拠点となった宜野湾市大山の焼きドーナツ「HYGGE」店主の石田環さん。「旅が好きなので、旅の本で皆さんと会話がはずんだらうれしいですね」

宜野湾市佐真下のアイラッシュとネイル「tabby labo」オーナーの久田亜莉寿さん。
思い出書店の拠点、宜野湾市佐真下のアイラッシュとネイル「tabby labo」オーナーの久田亜莉寿さん。「思い出書店の取り組みを知って感動しました。月に1回お会いするお客様に楽しんでもらえる場が作れそう」

コミュニティパークnagonova
コミュニティパークnagonovaは、新しい何かが生まれる場所

人と本の可能性

「思い出書店の帯には、本を買った時の年齢や、その時の経験、なぜその本を手に取ったのかなど、そんなことを思い出して書いてくださいと伝えます。

 

だから、実際の帯は本の内容ではなく、本を読んでいた時の自分の状況についてのものが多い。例えば、サボってたとか、青春したかったなとか。表紙にひと目惚れしたけれど読まなかった、そんなことも書くんです。

そうやって思い出を振り返りながら書くこと自体が楽しいし、その楽しい気持ちが、本を通じて誰かと交換され、つながるという感覚が、言葉では言い表せないほど感動的なんです。

実際に、すごく嬉しかった、という感想も多くいただいています。

誰かの思い出を見て、すごいなと共感できるかもしれない。共感できるからこそ、この本なら交換してみたい、と思える。そんなつながりが生まれるといいなと思っています。

 

交換するとその本を寄付した持ち主に通知がいったり、その本の思い出を寄付者に伝えたりすることができます。

 

ただ、その通知に返信したり直接メッセージのやり取りはできない仕組みになっています。

メッセージを送りあえるとすぐに親しくなれるけれど、そうではなくて、もう少しもどかしくて、でもゆるやかに繰り返されるようなつながり。

例えば、本を交換し続けているうちに、あるイベントで偶然出会って、実はこの本、私と交換してたんです、と気づく。そこから交流が始まる、まるでドラマのような」と森石さん。

 

思い出書店のウェルビーイングな可能性は無限大ですね。

 

 

思い出書店

https://omoideshoten.com
https://www.instagram.com/omoide_books75/

 

拠点

「nagonova」https://alphadrive.okinawa/nagonova

「余白に愛を」https://www.instagram.com/yohakuni_aiwo/

「HYGGE」https://hyggeokinawa.shopinfo.jp/

     https://www.instagram.com/hyggeokinawa/

「tabby labo」https://www.instagram.com/tabby_labo/

沖縄CLIP編集部

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