首里から発信 コーヒーアイランドへ《rokkan COFFEE》

首里から発信 コーヒーアイランドへ《rokkan COFFEE》

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歴史文化

放送日:2025.01.27 ~2025.01.31

初回投稿日:2025.02.04
 最終更新日:2025.02.06

最終更新日:2025.02.06

首里から発信 コーヒーアイランドへ《rokkan COFFEE》 クリップする

しまんちゅ旅はじめました

コーヒーを一生の仕事に

rokkan COFFEE外観
那覇市首里。夜明け前の静かな龍潭通りに面した「rokkan COFFEE SHURI」からおいしそうなコーヒーの香りが漂います
 

rokkan COFFEEを営むのは、首里生まれ、首里育ちの奥武拓也さん。高校時代からコーヒーのおいしさに目覚め、いつしか自分で生豆を焙煎するほど、コーヒーにはまっていました。

 

大学卒業後は、いったん県内の会社に就職しますが、やはりコーヒーの道に進みたいと、自家焙煎のコーヒー店で淹れ方や焙煎技術を学びます。

 

その後、独立し、宜野湾市の外国人住宅で、飲食店への配達専門で、自家焙煎豆の販売をスタート。今ほどコーヒー豆へのこだわりが普及していなかった当時、事業を維持していくのは大変でしたが、コーヒーで身を立てたいという思いは強く、結局8年続けました。

沖縄の新しいコーヒーカルチャーを作りたい

2019年はコロナ禍でしたが、那覇の与儀市場通りに、ハンドドリップ専門の「rokkan COFFEE CREATORS」をオープンしました。

 

「このあたりはぐーさん(杖)通りと呼ばれる寂しいエリアでした。でもこの通りでコーヒー屋さんをやったら、人は絶対に戻ってくる。コーヒーって誰もが飲むものだし、 国境とか言葉を越えられるツールだと思うので、おじいちゃんやおばあちゃん、猫しかいないこの通りが、観光や外国からのお客さんで賑わう様子がイメージできたんです。直感ですね」と奥武さん。

 

rokkan COFFEEの店名は、五感(視・聴・嗅・味・触)に加えて、それ以上にきっと満足できる場所になるという奥武さんの直感を合わせた第六感が由来となっています。

 

与儀市場通りのrokkan COFFEE CREATORS店内

与儀市場通りのrokkan COFFEE CREATORS。この空間を共有する人たちがコミュニケーションを生みやすいようにと、あえてベンチシートにしました

大切にしたいSoil to Cup

2023年10月1日「国際コーヒーの日」にオープンした2号店 rokkan COFFEE SHURIでは、世界中のスペシャルティコーヒーのみを扱っています。

 

「コーヒーは、赤道を挟んだ北緯・南緯25度のコーヒーベルトで栽培されている作物で、栽培条件は1000m以上の標高と、さらに寒暖差があったほうがよい、というのが一般的な見解でした。

 

沖縄には寒暖差どころか、そもそも山もないですよね。だから僕も沖縄でおいしいコーヒーなんて作れるはずはないという、先入観がありました。

 

だけど、CREATORSをオープンして、日本で最初にスペシャルティコーヒーの認定を受けた国頭のADA FARMさんのコーヒーを飲ませていただいて、衝撃を受けました。沖縄でもこんなにおいしいコーヒーが作れるんじゃないかって!」

 

スペシャルティコーヒーとは、テロワール、品質、サステナビリティ、トレーサビリティなど、さまざまな基準をクリアした高品質のコーヒーのこと。

 

改めて、世界中のコーヒー生産国から輸入する安価な豆と、スペシャルティコーヒーについて考えた奥武さん。同じコーヒーでも、存在意義がまったく異なるのではないか? 

 

「コーヒー業界には、From Seed to Cup という言葉があるんですが、そこにはSeed(種)を生む土のニュアンスが入っていない。これはおかしいぞ? と思い始めて、コーヒーが生まれる土壌から、お客様のカップに注ぐまで、全てに責任を持ちたいと思い、SHURI店はスペシャルティコーヒー専門店にしました。

 

スペシャルティコーヒーは1杯2500〜3000円ほど。通常よりはかなり高価格ですが、バリューチェーン(生産者、ロースター、バリスタ、サービス)の思いや仕事をきちんとお客様にお伝えし、理解を深めてもらうことが、rokkan COFFEEの使命だと思っています。僕たちの合言葉は、Soil to Cup (土壌からカップまで)」と奥武さん。

沖縄と首里をイメージしたお店作り

SHURI店は、沖縄や首里をイメージできる内装と器にはやちむんや琉球ガラスなどの伝統工芸品を取り入れました。

 

琉球王朝時代は、王族とゆかりのあった奥武さん。お店のロゴは琉球王朝時代の家紋「左三つ巴」(ひだりみつともえ)を意識したデザインを取り入れました。

 

カッピングという作業でコーヒーの味を確かめる

毎朝カッピングという作業でコーヒーの味を確かめる奥武さん

 

ブラジルやエチオピアなど世界中のスペシャルティコーヒーと、その隣には生産者の顔が見えるトレーサビリティが並ぶ

店内には、ブラジルやエチオピアなど世界中のスペシャルティコーヒーと、その隣には生産者の顔が見えるトレーサビリティが並びます

 

コーヒーの生豆

厳しい基準をクリアした、届いたばかりのスペシャルティコーヒーの生豆。これから店内で焙煎します

 

焙煎中のコーヒー豆

焙煎中は、コーヒーの芳醇な香りが店内に漂います

 

ラテアート

バリスタたちのセンスが光るラテアート。器はもちろん沖縄のやちむん


rokkan COFFEE SHURIの店内

ベンチシートには、人と人を繋ぐ効果がある。居合わせた人の化学反応が楽しいと奥武さん

 

龍や三つ巴をイメージしたロゴが描かれた美しいデザイン

龍や三つ巴をイメージしたロゴが描かれた美しいデザイン

 

振慶名珈琲園

振慶名珈琲園を訪れました。「土を触らせてもらって、農家さんの思いを聞かせていただく農園研修は大事だと思います。抽出を通して、お客様に生産者の確かな仕事を丁寧に伝えていくのが僕たちバリスタの指名でもあります」と、rokkan COFFEE SHURI店長の比嘉幹樹さん(写真:中)

Soil To Cupは生産者の喜びに

rokkan COFFEEでは、スタッフたちのコーヒーへの理解を深めるために、農園研修を行っています。

 

国内でスペシャルティコーヒーに認定された農園は、すべて沖縄県内にあります。

 

2016年 ADA FARM(国頭村)

2022年 振慶名珈琲園(名護市)

2022年 しらせコーヒー園(久米島)

 

今日は、振慶名珈琲園を訪れました。

農園主で珈琲精製士でもある宮城禎明さんとコーヒーとの出会いをうかがいました。

「那覇の出身なんですが、東京で20年ぐらい働いて、土と触れ合うような仕事がしたいなと思い、沖縄に戻りました。どうせなら沖縄でしか作れないものをと。沖縄のコーヒーってそれほど注目を浴びていなかったので、面白いと思いました。

 

コーヒーを生産しようと決めてからも、そもそもコーヒー農家ってどういうものかもわからないので、コーヒー生豆を購入するコーヒー屋さんに話を聞きに行こうと。

 

でも、当時は僕、ブラックコーヒーを飲めなかったんですよね(笑)。それで、そもそもおいしいコーヒーってどういうものなんだろう? も知りたいと思い、あちこちのコーヒー店を訪れて、学ばせてもらいながら、コーヒーの知識を深め、並行して農業に取り組んできました。

 

沖縄ってすごいんですよ。生産者がチェリーから生豆を作り、ロースターに渡して、ロースターが焙煎した豆がバリスタによって抽出され、カップにそそがれてお客さんの手に渡る、これが最低数のバトン。

 

海外だと、チェリーを生産する人、精製する人、集める人、流通業者や商社が入り、さらに海を渡って誰かの一杯になるんですけど、沖縄だとこの端っこから端っこまでが、全部解決するんです。

 

僕のコーヒーが販売されている時期にrokkan COFFEEに行くと、レジで前に並んでるお客さんが、僕のコーヒーを注文してくれたりするわけで。市販されてるコーヒーとはひと桁違う僕のコーヒーを選んでくれる。この喜びを味わえる生産者は、世界中どこを探しても沖縄以外にないんじゃないかな?

 

僕がコーヒー栽培を始めた頃に、 ADA FARMさんがスペシャルティーコーヒーに認定されました。

 

高い品質のコーヒーとは? どうすれば品質の高いコーヒーを作ることができるのか? など、知識として勉強しながら栽培を始められたのは、我々のような後発には、大きなメリットでした」

 

振慶名珈琲園のコーヒー豆

振慶名珈琲園のコーヒー豆の隣には、宮城さんと農園の情報が添えられています

 

コーヒーの実

宮城さんが育てるコーヒーはとても甘みを感じられるそう。「コーヒーには農園主の特徴が表れます」と奥武さん

 

農園の土

宮城さんが大事にしているのが土づくり。とあるコーヒー屋さんから手に入れたエスプレッソグラウンズを発酵させて堆肥を作り、根元に撒きます。土はかわいいミミズの棲家となっていました。「コーヒーグラウンズはしっかり発酵させたら窒素肥料になるんですよ」と宮城さん

 

コーヒーの苗木

自然にこぼれ落ちた種から発芽し、成長した苗の根っこの生育から、土についての奥武さんの推測を比嘉さんと共有しています

自分で育てたコーヒーをより自信を持って消費者に届けるために

次に訪れたのは、東村にあるコーヒー農園「Harmony Farm」。

義理のお父様から畑を引き継いだ比嘉江利子さんが営んでいます。

 

畑は美しく手入れされ、遮光のために導入したハウスの中を心地よい風が通り抜けます。

 

義理のお母様のためのコーヒー栽培でしたが、比嘉さんの協力もあり、今では600本の木に赤や黄色のチェリーが実ります。

 

比嘉さんは、自分が作るコーヒーを客観的に評価ができるようになりたいと、※Q Arabica Grader資格を取得しました。

※Q Arabica Graderとは、正式名称はLicensed Q Arabica Grader 。スペシャルティコーヒー協会(SCA)が定めた基準や手順に則ってコーヒーの評価ができると、コーヒー・クオリティ・インスティテュート(CQI)が認定(場合によってはSCAとCQIの両方)した技能者のこと。

 

「生産者は、自分のコーヒーってどう評価されてるんだろうとか、どういう味なんだろうって気にはなるんですが、なかなか自分ではそれがわからないものなんです。資格は私が前進するための自信に繋がりました。

 

rokkan  COFFEの皆さんは、栽培に興味を持って、いろいろな質問を投げかけてくれて、それをしっかり消化して、お客さんに伝えてくれています。私の作ったコーヒーが誰かのカップに注がれていると感じられるのは、本当に嬉しいですね」

 

コーヒーチェリー

比嘉さんが育てるチェリーは実の大きさが特徴のようです

 

rokkan COFFEEの奥武さん

「小さなこの島だからこその価値を高め、コーヒーの島、沖縄と言われるように、Soil to Cup のバリューチェーンをみんなで築いていきたい」奥武さんの願いです

 

rokkan COFFEE CREATORS

那覇市樋川1-29-9

電話: 098-996-5311

営業時間:6時〜18時

定休日:なし

 

rokkan COFFEE  SHURI

那覇市首里当蔵町2-14 やまごうビル1F

電話:098-943-4399

営業時間:6時〜18時

定休日:なし

​​​​​​https://www.rokkancoffee.com/index.html

沖縄CLIP編集部

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