伝統の壺屋焼の窯元。100年後まで灯し続けたい窯の火《陶眞窯》

伝統の壺屋焼の窯元。100年後まで灯し続けたい窯の火《陶眞窯》

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歴史文化

放送日:2024.09.09 ~2024.09.13

初回投稿日:2024.09.17
 最終更新日:2024.09.17

最終更新日:2024.09.17

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しまんちゅ旅はじめました

伝統を受け継ぐために

読谷村にある「陶眞窯(とうしんがま)」は、沖縄伝統の焼き物である「壺屋焼」の技法を受け継ぐ窯元です。唐草や魚紋といった伝統的な染付文様を用いながらも、現代の暮らしに溶け込むモダンなデザインが人気を集めています。

 

2代目で工場長の相馬大作さんは、「伝統は守るだけでなく、変化を取り入れることも大切」と語ります。その精神はものづくりだけでなく、ものづくりを支える職人たちの働き方にも取り入れられています。「働く人あっての窯元、伝統ですから。まずはそこから変えていくことにチャレンジしました」という大作さんは、窯元を法人化して職人たちの収入の安定化を図り、多様な働き方にも柔軟に対応するなど、伝統の未来を見据えた改革に取り組んでいます。

工場長の相馬大作さん(写真・右側)。スタッフの働き方にも日々心を配る
工場長の相馬大作さん(写真・右側)。ものづくりだけでなく、スタッフの働き方にも日々心を配っています

工場併設のギャラリーに並ぶやちむん(器)
工場併設のギャラリーでは、伝統とモダンが融合する陶眞窯のやちむんを購入することができます

分業制だからできること

やちむんの製造は、土捏ね、成形、絵付け、焼成など20以上の工程があります。沖縄の工房では、一人の職人が全ての工程から販売までを担うスタイルが一般的ですが、陶眞窯では、壺屋焼で古くから取り入れられてきた分業制を継承しています。

 

「分業制にすることによって、各工程の精度を保ちつつ、職人が各々の技術を深めることができます」と、大作さん。スタッフ一人ひとりの技術や特性、希望を踏まえた上で、多様な個性を尊重しながら役割分担を決めているそうです。

製造工程の一旦を担う相馬大作さん
自らも職人として、製造工程の一旦を担う相馬大作さん

絵付けの工程
絵付けの工程。数年かけて一つの作業にじっくり取り組むことで、技術の上達が深まるそう

初代、相馬正和さんの原点

大作さんのお父様で初代窯元の相馬正和さんは、神奈川県横浜市のご出身。もともと料理人だった正和さんは、料理を彩る器に魅了されて陶芸の道へと進んだそうです。

 

沖縄に来たのは、人間国宝・金城次郎さんのやちむんに出会ったことがきっかけ。次郎さんに弟子入りを志願したものの叶わず、壺屋焼・育陶園の高江洲育男さんのもとで修行を積んだ後、1975年に恩納村で陶眞窯を開きました。

 

「壺屋焼の唐草は、縁起の良い吉祥紋様。45年間、ずっと描き続けています」という正和さん。壺屋焼の伝統と魅力を現代に伝え続けると共に、陶芸家として新しい創作表現にも挑戦しています。

陶眞窯を築いてまもなく50年になる相馬正和さん
陶眞窯を築いてまもなく50年になる相馬正和さん

描かれた唐草は、陶眞窯の代表的な柄の一つ
伸びやかに描かれた唐草は、陶眞窯の代表的な柄の一つです

相馬正和さんの作品
相馬正和さんの作品。伝統を越えた自らの創作活動にも打ち込んでいます

使ってみて初めてわかる魅力

陶眞窯に併設されている「やちむんカフェ群青」は、相馬正和さんの次男・正尚さんのお店です。陶眞窯の器を使った本格的な窯焼きピザや、手作りのスイーツを楽しむことができます。

 

「父が料理人だった影響もあって、昔からお菓子作りとか料理が好きで。どうせなら、自分の家族がつくっている器を見せられるカフェをやりたいなぁ」という想いでお店を開いたという正尚さん。食事をしながら実際にやちむんに触れてもらうことで、温かみや使い勝手を感じていただけるように工夫しているそうです。


イタリア仕込みの本格ピザをピザ窯で焼く相馬正尚さん
イタリア仕込みの本格ピザをピザ窯で焼く相馬正尚さん

カフェにはギャラリーコーナーもあり、気に入った器を購入することができる
カフェにはギャラリーコーナーもあり、気に入った器を購入することができます

カフェではやちむんの器で食事が提供される
「食」をきっかけにして、やちむんのぬくもりや魅力にふれることができます

ものづくりの現場にふれる体験

陶眞窯では、「やちむんの文化をもっと身近に感じてもらいたい」という想いから、工房見学や陶芸体験も毎日開催しています。陶芸体験では、職人見習いのスタッフが土づくりやシーサー作り、器作り、絵付けなど、希望に合わせた体験をサポート。職人さんの仕事を間近で観たり実際に自分が制作を体験することで、やちむんの魅力を体感することができます。

希望に合わせたやちむん作りを楽しめます
一人でも家族でも友人同士でもOK。希望に合わせたやちむん作りを楽しめます

工房見学では、伝統の器が実際に作られていく工程を間近に観ることができる
工房見学では、伝統の器が実際に作られていく工程を間近に観ることができます

伝統の窯を継承するために

陶眞窯では、地元・読谷村の主婦や子育て中のお母さんなど、限られた時間しか働くことができないパートタイムのスタッフも積極的に受け入れています。その中には、なんと20年近く働いているベテランのスタッフもいるそうです。

 

300年にわたって受け継がれてきた壺屋焼を次世代に伝えるために。そして、職人たちの手によって100年後も壺屋焼が生み出されている未来を目指して、陶眞窯の営みが今日も続いていきます。


若い職人の技術習得をサポートする工場長の相馬大作さん

若い職人の技術習得をサポートする工場長の相馬大作さん

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壺屋焼窯元 陶眞窯

住所 /
沖縄県中頭郡読谷村座喜味2898-4
TEL /
098-958-2029
営業時間 /
9時〜17時30分
定休日 /
日曜日
Webサイト /
https://tousingama.com/

沖縄CLIP編集部

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