食はクスイムン。琉球古来の知恵を台所で生かす《薬膳琉花》

食はクスイムン。琉球古来の知恵を台所で生かす《薬膳琉花》

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歴史文化

放送日:2024.10.07 ~2024.10.11

初回投稿日:2024.10.16
 最終更新日:2024.10.16

最終更新日:2024.10.16

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『御膳本草』との出会い

「薬膳琉花」は、琉球料理伝承人で琉球薬膳研究家の宮國由紀江さんが主宰する食の講座です。沖縄に古くから伝わる「食はクスイムン」=食べるものは薬であるという考え方に基づいた、現代の食卓に生かせる琉球薬膳を学ぶことができます。

 

宮國さんが薬膳を学び始めたのは、今から20年前のこと。当時、栄養士として病院に10年以上勤務していた宮國さんは、お年寄りから食に関する話を聞くたびに、「栄養学だけではカバーしきれないことがある」と実感。東京で中医学を学ぶことを決意し、その流れの中で、琉球時代の食医学書である『御膳本草(ぎょぜんほんぞう)』と出会います。

 

「それまで病院でお年寄りから聞いていた話、たとえば、“傷がある時はこれを食べてはダメ” とか、“ 喘息の時にはこの汁を飲みなさい” とか、それと同じ内容のことが『御膳本草』には書かれていて。琉球料理の原点はここにあると感動しましたし、この素晴らしい先人の知恵をなんとしても沖縄で復活させなければいけないと、勝手に使命感を持ちました」と、宮國さんは振り返ります。


『御膳本草』は1823年に渡嘉敷親雲上通寛(とかしきぺーちんつうかん)が編纂

『御膳本草』は1823年に渡嘉敷親雲上通寛(とかしきぺーちんつうかん)が編纂し、首里王府に献呈したと言われる琉球唯一の本草書

 

『御膳本草』には約300種の食材の効能や食べ方が書かれています

『御膳本草』には約300種の食材の効能や食べ方が、琉球語、日本語、中国語の3ケ国語で書かれています(写真は、現代語に翻訳されたもの)

 

「薬膳琉花」の座学の様子

「薬膳琉花」の座学の様子。この講座からたくさんの薬膳料理人が生まれています

薬膳の知恵はホームドクター

薬膳というと生薬を使うようなイメージがありますが、「食材の持つ力を利用することで薬膳になりますから、スーパーにあるごく普通の食材で十分に作れます。たとえば、ハンダマは血の薬。お肉や豆腐と合わせて食べることで血を綺麗にしてくれます」と、宮國さん。お教室に通う生徒さんからは、「薬膳を学んでから、病院に行くほどではないけれどちょっと体調が悪いというような時に、食べ物で直すことができることを知って食生活が大きく変わりました」という声も。

 

「現代の栄養学も良いですけれど、古典の栄養学である薬膳は、謎解きのような感覚が楽しいです。この季節になると体調が悪くなるのはなぜなのか、なぜ頭が痛くなるのか、まるで絡まった糸をほどくかのように、つまづいているところ、根本的な原因が見えてくることが魅力です」(宮國さん)


「薬膳琉花」料理教室の様子

実践しながら学ぶ料理教室。この日は、体内にこもった夏の熱を吐き出して乾燥を潤す、チキナー(からし菜)を使ったまんじゅうを作っています

 

冬瓜は丸ごと使える優れた食材

冬瓜は丸ごと使える優れた食材で、実はもちろん皮はお茶に、種は乾燥させると漢方薬になるそうです

 

チキナーと豚肉のまんじゅうと、冬瓜と緑豆のスープ

秋の養生食、チキナーと豚肉のまんじゅうと、冬瓜と緑豆のスープ

愛された味を受け継ぐ

「薬膳琉花」から徒歩3分のところにある創業40年の老舗弁当屋「いさ屋」は、宮國先生のご実家。「いさ屋」の名物菓子として知られるサンナッツは、1980年にアメリカ文化の影響を受けて生まれたタルトです。沖縄のチャンプルー文化の中で育まれ、長く地域に愛されてきたこのお菓子が、職人の高齢化で消滅の危機にあると知った宮國さんは、「地域の宝を消したくない」という想いでその製造を引き継ぎました。

 

「サンナッツは、宮古産の黒糖とココナッツ、卵をたっぷり用いたお菓子です。

薬膳的には、心を落ち着かせてリラックスさせる効果があります。黒糖味は少しほろ苦くて濃厚なので、ワインや泡盛にもよく合います。お菓子の甘味は癒しですから、心が疲れた時やちょっと頑張りすぎた時に食べていただきたいです」と、宮國さんは話します。


一つひとつ手作りしているサンナッツ

毎朝7時から一つひとつ手作りしているサンナッツ。地域で愛されてきたスイーツを未来に繋いでいます

 

薬膳のエッセンスを加えてリニューアルしたサンナッツ

薬膳のエッセンスを加えてリニューアルしたサンナッツは、2023年「沖縄優良県産品NEXT部門」で最優秀賞に選ばれました

 

かわいいキャラクター「サンナッツさん」が描かれたレトロなパッケージ

かわいいキャラクター「サンナッツさん」が描かれたレトロなパッケージが目印です

楽しく食べることの大切さ

宮國さんの原点は、中学2年生の頃にあるそうです。当時、24時間営業の弁当屋を経営していたご両親は忙しく、食事のほとんどを祖母と食べていたという宮國さん。そこで昔ながらの料理と、「食べることで人は元気になる」「食べものは人を癒す」ことを身をもって学んだそうです。

 

「生きることは食べること。食べることで人を笑顔にしたいという思いで、この仕事を続けています。栄養も大切ですけれど、いちばん大切なことは、環境を整えて楽しく食べることです」という宮國さん。ご自身も、忙しい毎日の中で料理する気力がない時は、缶詰などを活用した軽いサラダなどで済ますことも多いそう。

 

「仕事を終えた後の夕食は、とてもシンプルです。食べたいものを、大好きなワインと一緒に美味しくいただくことが私の癒しの時間ですね」と宮國さん。

 

手軽なメニューを作って、ご主人とお二人でのお夕食

手軽なメニューを作って、ご主人とお二人でのお夕食。宮國さんの癒しの時間です

 

薬膳琉花

いさ屋(サンナッツ販売)

住所 /
沖縄県うるま市宮里265−1
TEL /
098-973-9067

沖縄CLIP編集部

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