今年は旧暦の5月が2回の“ユンヂチ”

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歴史文化

初回投稿日:2017.06.21
 最終更新日:2024.04.12

今年は旧暦の5月が2回の“ユンヂチ”

ん?ゴンチチ?ナンチチ(沖繩の方言で焦がすこと)?。いえいえ、今年は、約33ヶ月に一度めぐってくる“ユンヂチ”、閏(うるう)月のある年です。このため、今年は、旧暦の5月が2回あります。旧暦文化の色濃く残る沖繩では、このユンヂチの年に、お墓や仏壇まわりのことをすると良いとされています。新聞やテレビをよ〜く見ていると、仏具屋さんや霊園のテレビCMや広告も盛んに行われていますからご来沖の際には、ぜひチェックしてみてくださいね(笑)。
 
シーミー(清明祭)の様子
 
ということで、この記事も旧暦進行(少々というかかなり遅れ気味なのですがあしからず)というかウチナータイムですがそこはご愛嬌で。梅雨入り前の“うりずん”の頃から最近までの私の道草風景をお届けします。まずは、4月中旬に行われた“シーミー(清明祭)”の様子から。本土の二十四節気の清明の頃にあたり、先祖供養のお墓参りをします。旧盆やお正月と並ぶ大きな行事で、私も実家の門中(もんちゅう)墓にお参り。門中墓は、親戚一族が入る共同墓のようなものです。普段はなかなか顔を合わすことのない門中(遠い親戚)のみなさんともご挨拶。
 
門中墓で線香をあげる
 
門中墓には、入れ替わり立ち替わりお供えの人が訪れます。重箱に詰めたごちそうと、お酒、果物などを供え、ヒラウコーとよばれるお線香とあの世のお金“ウチカビ”も忘れずに・・・。
 
家族みんなで“ウートートー”と手を合わせます
 
家族みんなで“ウートートー”と手を合わせます。ウートートーは、漢字で表すと“御尊々”。ご先祖様を敬いますという意味が込められていますよ。
 
お供えした重箱料理
 
こちらがお供えした重箱料理。左のお重はすべて私が作りました〜!7品か9品の奇数のごちそうを詰めるのが習わしです。右上から、グンボウ(ごぼう)の煮付け、こんにゃくの煮付け、島豆腐の揚げたもの、三枚肉の煮付け、昆布の煮付け、赤かまぼこ、ターンム(田芋)の唐揚げ煮、にんじんとインゲン豆と魚肉ハムの天ぷら、いか天ぷら。沖繩の冠婚葬祭は、基本、このお料理です。お豆腐の切り方や三枚肉の盛り付ける向き、かまぼこの色などで祝儀・不祝儀が区別されます。もうひとつのお重には、お餅やお菓子が詰められます。
 
お供えした重箱料理をワンプレートに盛り付け直してみましたよ
 
昔は、そのままお墓の前で“ウサンデー(直会/なおらい)”してごちそうをいただいたものですが近頃はもっぱらお家で好きなものを足したりしてみんなでワイワイにぎやかに楽しみます。今年はこんな風にワンプレートに盛り付け直してみましたよ。
 
日本一小さな蝉、“イワサキクサゼミ”
 
さて、シーミーの時期(4月中旬)にちょうど鳴き始めるのがこの日本一小さな蝉、“イワサキクサゼミ”です。体長わずか12〜17ミリのかわいらしい蝉です。宮古島や石垣島、沖繩本島では南部でのみみられます。
 
街路樹としてよく植えられている“クルチ(黒木)”
 
5月も半ばを過ぎた頃、家を出て駐車場へ向かう途中に、ふっと甘〜い香りがどこからか一瞬漂ってきました。沖繩では庭木や街路樹としてよく植えられている“クルチ(黒木)”。三線の材料にも使われる琉球黒檀です。みかんの花のような小さな小さな花をつけていて、それが甘い芳香を放っていたのですね。黄色や赤の実がつきますが、甘みがあり昔は食べていたそうですが今はもっぱら鳥たちのごちそうです。
 
テッポウユリ
 
この時期、沖繩の野山で一斉に咲き誇る植物たち。テッポウユリもそのひとつです。私の散歩道、知念グスクへの坂道沿いをポツリポツリとまっ白く彩っています。岩肌から自生するテッポウユリは、一生懸命、こんな風に真横に伸びてとても健気。頭が下がります。
 
オキナワン・ハーブ“サンニン(月桃/げっとう)”の花
 
そして! 大好きなオキナワン・ハーブ“サンニン(月桃/げっとう)”の花も、この季節、満開となります。白い桃のような小さな蕾をぎゅっとしぼると月桃のしずくが数滴。化粧水や石鹸としても人気の高い月桃の天然水が楽しめますよ。香りも姿も美しく、瑞々しいこの季節の象徴です。
 
イシガケ(キ)チョウという蝶
 
こちらは田舎生まれ田舎育ちの私ながら、生まれて初めて見た蝶です。一瞬、昼に飛ぶ蛾なのかしらと思いました。調べてみると、イシガケ(キ)チョウという蝶で、石垣のような模様がその名の由来だそう。本来は南西諸島に生息していたものが近年では温暖化などの影響で、紀伊半島や近畿地方あたりまで北限がのびているとか。
 
ハブの亡骸
 
お食事中の人は御免ください。ひょいと道端の草むらに乗っけられていたのは、ななんと、ハブの干物。もとい、交通輪廻で命を落としたハブの抜け殻ならぬ亡骸でした。4〜6月はハブの活動期、夜、車を走らせていると道路をにょろにょろと横断する姿に遭遇することもしばしば。ウチナーンチュはハブに遭遇したら、わざわざ車をバックさせて轢く。というのは、うちの田舎ではあながち嘘でもありません・・・。ハブ同様、昼間のドライブ中には、俊敏に道を横切るマングースを目撃することも。私の住む南城(なんじょう)市だと、近所のニライカナイ橋の上り口あたりや、知念(ちねん)界隈で頻繁に見かけます。
 
花壇
 
まあ、こんな具合に本格的な夏を目前に、草木や動物たちの生命の息吹に溢れながら、まだ梅雨模様の沖繩です。旧暦の5月4日(今年は新暦5月29日でしたね)、ハーリー(爬竜船競争)のドラの音が響けば梅雨があけると言われていますが、なんせ、今年は旧暦の5月がリピート。2度めの旧暦5月4日は新暦の6月27日になっていますから、その頃あたりがきっと沖繩の梅雨明けでしょう!とひとり気象予報士宣言の私。でも、2度目のハーリーはないのでくれぐれもご注意を。画像は、最近、沖繩の住宅や建物の外壁でよく目にするようになってきたデザイン。このモチーフ、なんの文様だか染め織り好きな方ならおわかりになりますよね。そう、『いつ(5)の世(4)までも』の思いを5と4のマスの織り目に込めた、八重山の伝統工芸“ミンサー織り”の文様です。素敵な郷土愛、なんだかほっこりし(4)マス。

沖縄CLIP編集部

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