地域で育てる《にじいろのゾウ》《ほしおかプロジェクト》

地域で育てる《にじいろのゾウ》《ほしおかプロジェクト》

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歴史文化

放送日:2024.04.22 ~2024.04.26

初回投稿日:2024.05.15
 最終更新日:2024.08.23

最終更新日:2024.08.23

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にじいろのゾウのお弁当

春休みが始まった宜野湾市内小学校のお昼、先生からお弁当を受け取るこどもたちの姿がありました。

お弁当を届けているのは、ボランティア団体「にじいろのゾウ」。春・夏・冬休みの間、毎日、こどもたちにお昼のお弁当を届けています。

なぜこのような活動をしているのでしょうか? 代表の石神瑞紀さんに聞いてみました。
「きっかけはコロナ禍の臨時休校でした。ちゃんとご飯を食べれらているのかな? というこどもたちの顔が浮かんで。こども食堂もあるんですが、いろいろな事情で、そこまで足を運べない子がいるのも現状なので」

その想いに賛同した仲間が数名集まり、「にじいろのゾウ」を立ち上げました。2024年春、4年目の活動になります。

にじいろのゾウのお弁当は、先生方の目線で、気になるこどもに手渡しされます。

地域の飲食店にお弁当を作ってもらい、小学校へ運びます。活動がお休みの日は、地域のパン屋さんで使える引換チケットがこどもたちに渡されます。

スクールソーシャルワーカーを務める武村真紀さんは、にじいろのゾウの活動について、「休み中のこどもたちの様子も見守ることができますので、本当にありがたいです。こどもたちも、お休みの間でも、またおいしいお弁当がもらえるの? と、目をキラキラさせてうれしそうです」

にじいろのゾウという名前には、群れで子育てをするゾウのように、こどもたちの健やかな成長を地域みんなで見守りたいという、メンバーの想いが込められています。

「ふぁい・みぃる」のお弁当
宜野湾市大謝名の「ふぁい・みぃる」のお弁当。こどもたちに人気のおかずが日替わりで提供されています

学校の事務室前
学校の事務室前でお弁当を配布します。にじいろのゾウのお弁当は、学校とこどもをつなぐ役割を果たしています

石神瑞紀さん
「ちょっとした行動が、誰かの何かの役に立つかもしれない、ということを、こどもたちに未来に持っていってもらいたい。大人がそういう姿を見せてもいいんじゃないかな」と石神瑞紀さん

こどもの居場所 ほしおかプロジェクト

宜野湾市我如古の住宅街にある「~みんなの助産院~ちねんさんち」では、毎週月曜日の午後3時から、「みんなの居場所~Love my Self~(以下ラブマイ)」をオープンします。

主宰しているのは、ボランティア団体ほしおかプロジェクトのほしおか十色さんと代表の山内由夏さん。

「ここは、こどもたちの居場所です。一般的な学童と違い、利用は無料なので、その性質は違うと思います。ラブマイでは、こども達と何かを体験することを心がけていて、宿題や遊びの他に、ポテトチップスやおにぎりといったおやつ作りのイベントも行っています。保護者もこどもも、地域の人もみんなを巻き込んで子育てをする大切さをしみじみ感じています」と山内さん。

ポテトチップス
今日は地域の方が寄贈してくれたじゃがいもで、ポテトチップスを作りました

児童虐待防止支援アドバイザーであるほしおかさんは、こどもの頃から虐待を受け、その人生はとても厳しく険しいものでした。

「ここにくるこどもの中には、家庭に事情を抱えている子もいますし、中には、日常のいろいろなルールを教わってこなかった子も。危ない時には叱りますし、何回いっても聞けない子にも、かまい続けます。ほったらかしにしない、こちらのメッセージを伝え続けることが大切だと思います。そして、ささいなことでも、ありがとう、よかったね、と声をかけてほめます。ありがとうの気持ちを伝えていくことを大事にしていきたいと思います」

脱いだ靴
脱いだ靴は、きちんと揃えて部屋に入りましょう

ルール
世の中にルールがあることを、こどもたちに根気よく教えます

ほしおか十色さん
「自分の幼少期・学童期・児童期にあったらよかったと思う場所を、自分が作れていることに、感謝しかありません」とほしおか十色さん

山内由夏さん
「昔とは異なり核家族が多いので、実は孤立しているお母さんもたくさんいます」と山内由夏さん

ボランティア団体と学校が連携した取り組み

宜野湾市の嘉数中学校では月に2回、放課後の校内に「フリースペースアンク」という場を設け、ほしおかプロジェクトの二人が訪れます。学校と民間のボランティアが連携した全国でも珍しい取り組みです。

玉城健蔵校長先生(令和6年3月現在)は「アンクという場所を通して、教員では吸い上げられない生徒たちの声を、ほしおかプロジェクトが受けとめてくれます。時には深夜にわたるまで付き合っていただいて。皆さんのおかげで、非行に走るのを防げたこどもは少なくないと思います。親御さんからも感謝のメーセージが届きます」

家庭や本人の問題など、誰にも相談できないことも、ほしおかプロジェクトの二人には心を開けるようです。自己主張が苦手な子、一人で思い悩んでいるこどもたちにとっては、心強い存在です。

玉城健蔵校長
「アンクは、こどもの悩みから派生する問題を未然に防ぐ取り組みだと思っています」と玉城健蔵校長

予防、未満・未然につながる 環境づくりが必要

ほしおかさんは続けます。
「虐待にはいろんな種類があります。以前は、早期発見・早期対処といわれていましたが、今は予防、未満・未然を作る環境が必要だと考えて、居場所づくりのプロジェクトを立ち上げました。私たちは校区内にいます。学校の先生と違って転任もありません。気軽に話ができる人が、地域の中にいること、そして居続けることが第一歩だと思います」

アンク
アンクの初日には生徒たちの行列ができました。先生たちは、列の中に、問題はないと思っていたこどもたちを見つけて、ドキッとしたそう

こどもが悲しい思いをしない社会に

ほしおかプロジェクトの顧問、知念菜穂子さんは、助産師として、長年多くの女性たちと接し,性被害などを目の当たりにしてきました。DVや未成年の妊娠…。

自宅である助産院を開放して、女性やこどもをサポートする活動を行う中で、ほしおかさんと出会いました。ほしおかさんが当事者として語る内容は、多くの女性やこどもの代弁であり、その事が、世の中を照らす「光」だと感じ、今後、自分が進んでいく「道」をも照らしてくれたといいます。

現在は、毎週月曜日、ラブマイに場所を提供する他、不定期に母と子が参加するイベントなども開催しています。

孤立しているのは子だけではありません。親だけでがんばらず、学校だけでがんばらず、地域で育てるとはどういうことなのかを、改めて教えてくれる取り組みです。

知念菜穂子さん
「ラブマイに通い、アンクも利用してくれていたこどもたちが、高校生になっても遊びに来てくれます。本当にうれしいです」と知念菜穂子さん

沖縄CLIP編集部

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放送日:2024.04.22 ~ 2024.04.26

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