笑顔を持ち寄るみんなの食堂《かねまん食堂》

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歴史文化

放送日:2024.03.04 ~2024.03.08

初回投稿日:2024.03.17
 最終更新日:2024.03.28

笑顔を持ち寄るみんなの食堂《かねまん食堂》

野菜も調理もすべて持ち寄り

やんばるの森と海に囲まれた、国頭村の東海岸沿いに位置する桃原(とうばる)地区。赤瓦の屋根、屋敷を囲うフクギ並木といった昔懐かしい風景が今も残る、風光明媚な集落です。その中心にある桃原地区公民館では、毎月1回、地域の人たちに100円で昼食を提供する「かねまん食堂」が開催されています。
食堂を運営しているのは地域の女性たち。発起人である山田梨枝子さんが中心となって、「気軽に集える地域の居場所づくり」を目的として2017年に取り組みをスタート。ボランティアで活動を継続し、取材に訪れた2024年2月には69回目の開催日を迎えました。

開催日の朝、たくさんの野菜を公民館の調理室に運ぶ山田さんの姿がありました。「これらの野菜は全部、地域の人たちから持ち寄られたものです。地域の農家さんからも、新鮮な無農薬の野菜が私の自宅にも次々と届きます。ありがたいことです」と、山田さん。山田さんに続いて一人、また一人とボランティアメンバーが集まり、朝9時から食材の下ごしらえが始まりました。

金萬神社
「かねまん食堂」の名前は、地域の信仰を集める公民館隣りの金萬神社から

山田さん
発起人の山田さん。明るく元気な笑顔で「かねまん食堂」を引っ張っています

野菜と愛情たっぷりのメニュー

調理台にずらりと並んだ野菜を見て、山田さんと一緒にメニューを決めるのは、料理上手の「しーちゃん」としてメンバーに慕われている染谷志恵子さんです。ホテルの料理人を長年勤め上げたという腕前を発揮して、かねまん食堂のコンセプトである「いつもの料理とはひと味違う、おしゃれな野菜料理」を考案しています。ちなみに、メンバーの皆さんが着ているお揃いのエプロンもしーちゃんのお手製。

書き出された「本日のメニュー」を見ると、その数すでに8品。でも、「作りながらもっと増えますよ」と、山田さん。雨の降る寒い日だったこともあって、メインメニューは具だくさんのお味噌汁になりました。集まった女性たちが忙しく手を動かしながらも、おしゃべりと笑い声が絶えない、にぎやかな調理室です。
 

料理中のメンバーたち
料理人としてのキャリアを生かせる「かねまん食堂」は、染谷さん(写真:右側)にとってもありがたい存在だそう

山田さん
メニューを張り出す山田さん。その日に集まった食材を見て決めていきます

お味噌汁
今日のメインメニューは、根菜たっぷり、具沢山のお味噌汁

「できること」を持ち寄ればいい

食堂運営に関わる仕事は、お料理の他にも会場の掃除や受付、食堂に飾る生花の準備、配膳、片付けなど多岐に渡りますが、メンバーの女性たちはその日、その時、「自分にできること」を見つけて自主的に動く、抜群のチームワークで食堂を盛り立てています。
午前11時、手際よく仕上げられたお料理が調理室で盛り付けられるのと同時に、食堂のホワイトボードには「本日の食材提供者」の名前が書き出されていきました。最後の1行には、「ありがとうございます」の一言も。
地域の人たちが「自分にできること」を、少しずつ持ち寄って続けてきたという食堂。利用する人はもちろん、運営する人たちにとっても、かけがえのないWell-beingな場所になっていることが伺えます。

ワイトボードに書き出す
野菜や食材を提供してくれた人たちの名前をホワイトボードに書き出すのが恒例

手際よくこなすメンバーたち
盛り付け、配膳、片付け、掃除...たくさんの仕事を手際よくこなすメンバーたち

食堂に彩りを添える
生花を持参して、食堂に彩りを添える役割の人もいます

100円玉に込められた「ありがとう」

11時30分からの開店に先駆けて、共同売店から「かねまん食堂のご案内」の放送が流れると、公民館を目指して地域の人たちが続々とやってきました。無料ではなく100円という値段を付けているのは、「無料だと遠慮して来ない人がいるかもしれないから」という気遣いから。案内放送でも「おとなり近所、お誘い合わせの上、お越しください」と、一人でも多くの参加を呼びかけています。

オープンから30分後、満席になった図書室には、常連さんたちと共に桃原区区長の金城勝也さんの姿もありました。「ボランティアのお母さんたちが皆さん元気なので、食堂に来た人たちもつられて、みんな笑顔になります。地域住民の顔が見れるので、できるだけ長く滞在するようにしています」と話してくれました。

食事を終えた皆さんに感想を聞いてみると、「野菜がいっぱい食べられてありがたい」「とても美味しくて、毎月楽しみにしている」「みんな満足していますよ」と、口々にかねまん食堂への感謝を述べられていました。
 

ゆんたく
毎月1回、食堂での食事とゆんたくを楽しみにしているという地域の皆さん

ごちそうさま
手を合わせて「ごちそうさま」。100円にたくさんの想いが込められています

食堂という名前の居場所づくり

今ではすっかり地域に定着している「かねまん食堂」ですが、始めた当初は反対意見もあったと言います。それでも、続けていくうちに活動が受け入れられて、食器を新しく揃えることができたり、集まる食材が増えるなど、今では地域の人が心待ちにする名物食堂になりました。

発起人の山田さんは、「いつかこの活動を引き継ぐ人のために、初回からずっと記録を残しています」と、6年間の記録が詰まった分厚い資料ファイルを見せてくれました。「平日の昼間の開催なので、どうしても若い人は少なくなりますが、誰でも気軽に参加できる場所になってほしい」と、開かれた食堂であることを願って活動を続けているそうです。

午後1時、かねまん食堂の閉店の時間です。帰路につく人たちを見送りながら、受付を担当している大城ゆかりさんが、かねまん食堂のもう一つの役割を教えてくれました。

「食堂に顔を見せない人がいたら呼びに行ったり、何気ない会話の中で健康状態を聞いたり、地域のお年寄りを見守る役割もあるので、終わった後にはそうした情報もメンバーで共有します」と、大城さん。

地域をやさしく見守り、みんなで育むかねまん食堂には、地域にWell-beingを広げるヒントがたくさん詰まっていました。


大城さん
受付での何気ない会話から地域の人たちの状況が見えてくるという大城さん(写真:右)

お見送り
「ごちそうさま」「また来てね〜」。挨拶を交わして笑顔で見送ります

かねまん食堂

住所 /
沖縄県国頭郡国頭村字桃原49(桃原地区公民館)
備考 /
*かねまん食堂は毎月1回開催。地域外の方の参加はご遠慮いただいております。

沖縄CLIP編集部

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