沖縄工芸品の未来をつむぐ《おきなわ工芸の杜》

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歴史文化

放送日:2024.01.15 ~2024.01.19

初回投稿日:2024.02.06
 最終更新日:2024.03.27

沖縄工芸品の未来をつむぐ《おきなわ工芸の杜》

沖縄の工芸品が一堂に

「おきなわ工芸の杜」は、沖縄の工芸産業の振興を目的として2022年にオープンした施設です。沖縄の工芸品に関する情報発信、工芸品の作り手の支援、そして作り手と使い手との交流という3つの役割を担い、多彩な展示や体験、ふれあいを通して沖縄の工芸品の新たな魅力に出会うことができます。

かつて豊見城址公園だった緑豊かな丘の上にある施設

かつて豊見城址公園だった緑豊かな丘の上にある施設
 

国指定の伝統工芸品が16品目もあり、日本屈指の「工芸の島」である沖縄。施設2階にある常設展示室では、国と県に指定された沖縄県の伝統工芸品をはじめとする、県内各地の工芸品を一度に見ることができます。一部には、本物の工芸品に直に触れて手触りや温もりを感じることができる展示もあり、工芸品の歴史や作り方について映像やタッチパネルで楽しく学ぶことができます。また、展示室の前には工芸品を購入できるショップやカフェも。島の歴史と風土の中で生まれ、人々の暮らしの中で育まれてきた沖縄の工芸品の世界をゆったりと楽しむことができます。

芭蕉布など、一部の展示物は実際に触れて感じることができます

芭蕉布など、一部の展示物は実際に触れて感じることができます

出会いとつながりが未来を広げる

工芸品の作り手支援として行われている「貸し工房」には、活動を始めて10年以内の作家さんが入居しています。染織、木工、漆器、紙、ジュエリーなど個性豊かな工房が並び、中には制作体験ができたり、作家さん自らが作品を販売している工房もあります。作り手と使い手の出会い、そして作り手同志の交流によって、有意義な出会いや思いがけないコラボレーションが生まれているそうです。

 

「他の分野の方との交流があるので、自分自身の視野や作るものの幅がすごく広がりました」と話すのは、貸し工房入居者の紅型染め・染色作家崎山ハナエさん。ジュエリー工房「kamii jewelry」の鈴木理津子さんは、「たとえば、紅型柄のものを作りたいと思ったらすぐに作家さんに聞くことができるし、そこからまた新しい発見があったりして、横のつながりに助けられています」と話します。


「私の作品に触れて心がやわらいでくれたら嬉しい」と、崎山ハナエさん
「私の作品に触れて心がやわらいでくれたら嬉しい」と、崎山ハナエさん

ケラマパールを使ったリング。「kamii jewelry」鈴木理津子さんの作品
ケラマパールを使ったリング。「kamii jewelry」鈴木理津子さんの作品
 

また、作り手の製作活動や人材育成の場として、広い作業スペースや大型の機械を使うことができる「共同工房」もあり、作業の様子を見学することもできます。木工房「MOKU OKINAWA」の安里幸太さんは、自身の作品を作るだけでなく、「もっと気軽にDIYできる場所を作れたら」という想いで、沖縄の木でものづくりしたい人を工房に招き入れ、制作のサポートも行っています。


場所や道具を提供して、沖縄の木の魅力を伝えている安里幸太さん
場所や道具を提供して、沖縄の木の魅力を伝えている安里幸太さん

 

「漆works三時茶」は、漆工房ロイツ、漆のさんかく舎、TRUNKsite という3つの漆工房が「ユニット」として入居している工房。ハレの日だけではなく、今の暮らしに馴染む漆製品を作っています。1人ではなく3人が集うことで、「お互いに話を聞いてみたり、制作と販売を得意分野で手分けしたり」と、それぞれの長所を持ち寄り、短所を補いながら創作活動ができることに、メリットを感じているそうです。

「漆works三時茶」の工房。作家さんの話を聞いて作品を購入することができます
「漆works三時茶」の工房。作家さんの話を聞いて作品を購入することができます
 

工芸品が生まれる瞬間に出会う

 

施設内には染織や陶芸、ガラス工芸の制作体験ができる工房もあります。その中の一つ、「玉藍工房」さんでは、30分からできる、琉球藍の藍染め体験が人気です。「体験された方は、染めた色が空気に触れて緑から青に変わる瞬間にとても感動されたり、なんで変わるんだろう?と科学的な目で考えるお子さんがいたり。反応が新鮮で、私たちも勉強になります」と、玉藍工房の藤澤和枝さん。

 

陶芸体験を提供している「沖縄さんご焼き工房」の真栄城悟さんは、「好きなことをすることで心穏やかになり、普段気づかない自分自身に出会えるきっかけになります。そのことを周りの人にも伝わることで、工芸の存在が生活や心の豊かさにつながっていくことを伝えたいです」と話してくれました。実際に作り手さんと一緒にものづくりを体験をしてみると、作品が単なる商品ではなく、そこに込められた技の積み重ねや伝えたい想いなども一緒に受け取ることができます。


琉球藍が空気に触れて酸化し、「青」が生まれる瞬間に立ち会うことができます
琉球藍が空気に触れて酸化し、「青」が生まれる瞬間に立ち会うことができます

作家さんの想いを聞きながら制作できることも楽しみの一つ
作家さんの想いを聞きながら制作できることも楽しみの一つ
 

伝統工芸の技を未来へ

施設の3階には、工芸の技術指導や人材育成を行う「沖縄県工芸振興センター」があります。施設2階にある研修室をのぞいてみると、約1年間に渡って技術などのノウハウを全般的に学ぶことができる織物、紅型、漆芸の研修が行われていました。

皆さん真剣なまなざしで制作に取り組む中、漆芸の研修生に話をお伺いすると、「漆がもともと好きで学んでいますが、実際にやってみるとこんなに工程が多いのかと驚いています」と、作り手になって初めて、その奥深さに気がついたそうです。

沖縄県工芸振興センターの広々とした研修室
沖縄県工芸振興センターの広々とした研修室

「自宅ではできない帯などの大きな作品に取り組めた」と紅型の研修生
「自宅ではできない帯などの大きな作品に取り組めた」と紅型の研修生

漆芸の研修は、経験がない人でも受講することができます

豊かな自然と歴史の中で育まれ、長い年月をかけて確かな技術が培われてきた沖縄の工芸品。「おきなわ工芸の杜」は、時代を越えて未来に紡いでいきたい技と心に出会える場所です。

 

*貸し工房の営業時間は、工房ごとに異なります

*体験工房での体験は事前予約がおすすめです

 

おきなわ工芸の杜

住所 /
豊見城市豊見城1114番1(豊見城城址公園跡地内)
TEL /
098-987-0467
営業時間 /
9:00〜18:00
休館日 /
月曜日(祝日の場合は翌平日)、12/30〜1/3
Webサイト /
https://okinawa-kougeinomori.jp/
沖縄県工芸振興センター /
https://www.oki-kougeicenter.info/

沖縄CLIP編集部

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放送日:2024.01.15 ~ 2024.01.19

  • 放送日:2024.01.15

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  • 放送日:2024.01.18

  • 放送日:2024.01.19

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