首里のお寺で心をととのえる《首里観音堂》

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歴史文化

放送日:2024.03.11 ~2024.03.15

初回投稿日:2024.04.02
 最終更新日:2024.04.02

首里のお寺で心をととのえる《首里観音堂》

首里の丘に響く鐘

ゴーン、ゴーン、ゴーン。朝7時、首里の街に鐘の音が響き渡ります。続いて聞こえてくるのは、境内を掃き清める竹箒の音。いつの時代も変わらない、首里観音堂の朝の風景です。

首里観音堂のある小高い丘は、かつて萬歳嶺(ばんざいれい)と呼ばれていました。薩摩に人質にとられていた琉球国の王子が無事に帰国したことを祝って、1618年に寺院が建立された歴史があります。境内には、26代目住職の南溟和尚が植えたというガジュマルも。樹齢はおよそ100年、戦禍を逃れた長老樹として祀られており、手を合わせて拝む人もいるそうです。

住職の善國乗榮さん
「人々の幸せを祈って毎朝、鐘をついています」という住職の善國乗榮さん

境内を掃除
清々しい光を浴びながら境内を掃除するが朝の日課

人々がお寺を訪れる理由

朝9時に本堂の扉が開くと、次々と参拝客が訪れます。ご祈祷や法要に訪れる地元の方はもちろん、観光客の姿が多いのも首里観音堂の特徴です。最近は海外からのお客様も増えているそう。全国的に人気のある「御朱印」を求めて訪れる人や、沖縄に古くから伝わる「首里⼗⼆⽀巡り」のために参拝される方もいます。

本堂の西側には、見晴らしの良い「三天堂」があります。那覇の街を海まで見渡せすことができ、晴れた日には慶良間諸島まで望める特別な場所です。のんびりと景色を眺めていた方にお話を伺うと、「いろいろなことがある今の時代だからこそ、こうした場所で気持ちを落ち着かせるといいですよね」と、話してくれました。

本堂内
本堂を訪れる人々は、心静かに手を合わせ、御仏に感謝を捧げます

三天堂
眼下に那覇の街を一望できる三天堂。この景色を見るために訪れる人もいます

三天堂の様子
三天堂には摩利支天、弁財天、大黒天が祀られています

お寺の音に癒される

お寺の法要では、お経の声に木魚(もくぎょ)や鏧(きん)、太鼓など、さまざまな仏具の音が重なって心地よい響きを生み出します。「お経を読むと、自然と右手が動いて楽器を叩いています。もう、体の一部ですね」と、住職の善國乗榮さん。これらの仏具は乗榮さんから生まれる前からお寺にあるもので、手入れをしながら大切に受け継いでいるそうです。

首里観音堂にはたくさんの宝物がありますが、中でも17世紀、約400年前の仏像である釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)は秘仏と言われています(非公開)。
「戦時中に、私のひいおじいさんが防空壕に持って逃げたという逸話が残っています。お顔に大きなヒビがあり、背中には大切なものを収める空間が空いています。歴史の重みを感じながら、大切に保管してます」と乗榮さん。仏像や仏具など、先祖代々大切に受け継いできたものたちが、訪れる人たちを慈しむ首里観音堂のwell-beingを生み出しています。

仏具
日々、お手入れをしながら大切に使い続けている仏具

釈迦牟尼仏
戦禍を逃れた貴重な秘仏、釈迦牟尼仏

自分の内側を見つめて

首里観音堂の正式名称は慈眼院(じもくいん)と言います。その由来は、ご本尊である千手千眼観自在菩薩。手のひらに目がついている千本の手は、あらゆる立場の人を救済しようとする慈悲の心を現しているとされます。そして今、自分の内側を見つめることで自らを慈しむ方法として、本来はお坊さんの修行である「坐禅」が注目を集めています。

夜の本堂で開催されている「坐禅会」をのぞいてみると、若い方から年配の方まで幅広い参加者の姿がありました。参加の目的はそれぞれですが、坐禅によって呼吸を整えることで心が整って、疲れや悩みが癒されたり、集中力が増したりするそう。現実をありのままに受け入れることを意味する「マインドフルネス」にも有効ということで、企業からも「坐禅会」の問い合わせが増えているそうです。

坐禅
坐禅をすることで体を整え、息を整え、心を整えます

千手千眼観自在菩薩
慈眼院のご本尊である千手千眼観自在菩薩

開かれたお寺を目指して

首里観音堂では、仏像をアートの側面から鑑賞する機会を設けたり、県内アーティストに襖絵の制作を依頼するなど、未来を見据えて芸術品(アート)を生み出し、保存することにも力を入れています。「昔から、お寺と芸術には深いつながりがあります。沖縄は芸術品の多くを沖縄戦で焼失してしまいましたが、京都のお寺に水墨画があるように、お寺は伝統工芸や芸術を守る場所でもあります」と乗榮さん。

また、「若い人たちにもに気軽にお寺に来てもらえるきっかけを増やしたい」という思いから、約5年前から音楽イベントの会場としても境内を開放しています。今では県内アーティストの公演が定期的にあるほか、県外から人気アーティストの依頼も相次ぐ人気の会場となりました。

アートや音楽という新しい扉から、首里観音堂のwell-beingな魅力が広がり、未来へと受け継がれていきます。

襖絵
天描画家、大城清太さんによる襖絵。アートの支援もお寺の役割と考えています

音楽イベントのチラシ
お堂で開催される音楽イベントのチラシ。お寺独特の雰囲気が好評だそう

首里観音堂(慈眼院)

住所 /
那覇市首里山川町3丁目1
TEL /
098-884-0565
本堂・参拝時間 /
9時〜17時30分
公式サイト /
https://www.shuri-kannondo.com/

沖縄CLIP編集部

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放送日:2024.03.11 ~ 2024.03.15

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