「なにもしないことの贅沢」を堪能できるB&B。池間島のツーリストホーム、ラサ・コスミカ

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初回投稿日:2015.07.07
 最終更新日:2024.02.07

「なにもしないことの贅沢」を堪能できるB&B。池間島のツーリストホーム、ラサ・コスミカ

コマ送りの映像のように目まぐるしく移ろう車窓の風景とか、会話×音楽×エンジン音が重奏的に身を包む街角の喧騒とか、好奇心が追いつけないくらいのスピードで現れては消えていく流行とか、そういういっさいの都会の刺激に心が疲れてしまったとき、多くの人の心を誘う場所のひとつが沖縄でしょう。


 
マリンスポーツに街歩き、ショッピングに芸能鑑賞、食堂探検にカフェ巡り。ひと通りの沖縄観光を堪能したら、締めくくりに、何もしない贅沢を味わってみるのはいかがでしょう。
 
まだ目覚めきれないでいる起きたての身体を、朝の光に委ねてみる。ビーチに寝そべって、水平線の上で真っ白な雲が形をゆっくり変えていくありさまをぼんやり眺めてみる。フルリクライニングのデッキチェアに身を沈め、アルコールの力を借りて星がきらめく夜の空に羽ばたいてみる。
 
そんなふうに、取り立てて何をするというわけではないけれども、一秒一秒刻まれつづける時を忘れて、ただ、生きていることの喜びを五感を通して味わいたいと思うとき。そういうときにおすすめしたい隠れ家的B&Bが、池間島のツーリストホーム ラサ・コスミカです。

ビーチ
小高い丘の上に立つツーリストホーム ラサ・コスミカの、真下に広がる自然海岸

宮古島と池間島を結ぶ池間大橋
 
限りなく天国に近いブルー。そういう表現がぴったりの青い海に囲まれた池間島は、沖縄本島よりも神に近い島といわれている宮古島よりも、さらに神に近い島。


 
映画『スケッチ・オブ・ミャーク』にも描かれた池間島独特の風習や神事が、いまも人の暮らしに寄り添うように残り、よそ者の立ち入りが禁じられた聖地があちらこちらに隠されていて、そういった表情とは真反対の、眩しい太陽に照らされる透き通ったコバルトブルーの海が魅せる表情が、旅行者を底抜けに明るく、楽園的な世界へと誘ってくれます。


「オープンした1998年には旅人が利用できる宿は大手のリゾートかビジネスホテル・民宿くらいしか選択肢がなかったんですよ」と語るのはオーナーの中島薄童(なかじま・はくどう)さん。「自分だったらこういうところに泊まりたい」と思う宿をきっと形にしたのでしょう。
 
宮古島から池間大橋を渡ると池間島。心地よい潮風を受けながら5分ほど車を走らせれば、やがて左手に土壁のエキゾチックな建物が目に入ります。インドのカルカッタに一年半ほど暮らしながら、伝統楽器シタールを学んだという中島さん。

無国籍な面持ちの建物は、中島さんが惹かれている西アジアから地中海沿岸、そして北アフリカにかけての土壁の質感など、頭の中で入り混じって、浮かび上がってきたイメージを、設計師に伝えながら形づくられたのだとか。



 
玄関のドアを開けるとお香の匂いがやさしく出迎えてくれました。左手の大きくとられた窓から差し込むやさしい光が、ダイニング兼用のシックな公共スペースに独特の空気感を添えています。
 



屋内のあちこちに飾られたミラーワークと呼ばれる刺繍や、中島さんが集めたオブジェがとめどなく旅情を掻き立てます。ベッド脇には真鍮製の万華鏡が置かれているというあたりのちょっとしたもてなしがありがたいです。

 
中島さんの案内で、さっそく二階にある個室に向かいます。フロアもドアもすべて木製。重厚感が漂う客室は素泊まり7,000円というコストを軽くしのぐ居心地のよさ。調度品やベッドカバー、クッション、グラスから冷蔵庫にいたるまで、趣味のよさにうっとり。壁に飾られたミラーワークはインドで古くから親しまれきた伝統的な刺繍に一つ。邪悪なものから身を守るという雲母を用いたのがはじまりで、大切な娘の嫁入りの際に母親から手渡されてきたそうです。

すべての部屋がオーシャンビュー。こじんまりしたベランダからは眼下に青い海を見渡せます。




「夜になると屋上からきれいな星を楽しめますよ」とおすすめされた屋上に、チェックインをすませてさっそく上がってみると、時刻は間もなく黄昏時。沈みゆく夕日が一日の最後の空を紅色に染めようとしていました。北側には北極星と、金星なのか火星なのか二つの星が一直線に並んでうすく輝いています。
 
文字通り360°のパノラマビュー。日が暮れてからビールとワインを手に再び屋上へ。この上なく静かで荘厳な夜空を飽きるまで見続けました。こんなにじっくり星空を眺めたのは何年ぶりのことだったでしょう。

 
翌日は早めに起床して、オーナーおすすめのビーチへと降りて行きました。宮古地方の海の美しさは慶良間諸島に匹敵するといわれているほど。ビーチからすぐのところにはスキューバダイビングやシュノーケリングのポイントがあります。


海の向こうに伊良部島を望むビーチは南向き。梅雨明け直後から7月上旬など強い南風が吹く時期には波が荒くなりますが、南風が落ち着く7月中旬からまだ暖かい11月上旬頃までは美しい海を独り占めできます。


 
芝生が敷かれた庭には、朝夕の心地よい時間を屋外で過ごせるようにと木製のテーブルとベンチが置かれ、庭と屋内をつなぐピロティには、日陰と潮風で日差しの強い日中でも快適に過ごすことができるように、デッキチェアが置かれています。
 
ラサ・コスミカとは多様な人種が共存するメキシコのホセ・バスコンセロスという思想家が提唱した概念で、ラサは人(人種)、コスミカは宇宙を意味しいているそうです。朝昼夜とそれぞれの時間が見せる表情を無声映画でも眺めるように味わうことができるよう、微に入り細に入りの心配りに満ちている「旅人の家」(ツーリストホーム)。


海と空を眺めながら過ごしていると、大いなる自然とちっぽけな自分とが言葉にならないなにかによって深く結ばれているような安心感に包まれます。
 
日々の暮らしにちょっぴり疲れ、「なにもしないことの贅沢」を味わいたくなったなら、ぜひこの「家」を訪れてみてください。

RAZA COSMICA TOURIST HOME

住所 /
沖縄県宮古島市平良前里309-1
電話 /
0980-75-2020
定休 /
不定休
Webサイト /
https://raza-cosmica.jimdofree.com/

沖縄CLIP編集部

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