『うりずん散策、ありんくりんアッチャーウォッチャー』
『うりずん散策、ありんくりんアッチャーウォッチャー』
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歴史文化
初回投稿日:2018.05.03
最終更新日:2024.03.27
最終更新日:2024.03.27
先祖供養のお墓参り、二十四節気の清明祭(シーミー)も県内各地でピークを迎えた4月中旬の沖縄本島南部。私の実家のある南城(なんじょう)市でも盛大にシーミー行事が行われました。佐敷(さしき)富士と呼ばれるスクナムイの麓にある我が門中(もんちゅう)墓へお参りしました。
血縁のある一族が入る共同墓を門中墓と言いますが、私の実家の門中墓は、今から190年以上も前に造られたもの。亀の甲羅に似ていることから亀甲墓(かめこうばか)とも呼ばれ、そのルーツは中国の福建省とも言われます。私が子供の頃は、お供えをした後は、このお墓の前でご馳走を広げ皆で食べたものです。
雨模様のこの日は、お墓の前で手を合わせ、ウサンデー(お供えものをいただくこと)はお仏壇のある家に帰ってからということになりました。
ヒラウコー(黒い沖縄独特のお線香)を置いた石の部分がお墓の入り口でもあります。お墓を開ける時は、バーベルで男の人が数人がかりでこの重い石の扉を動かします。お米、お酒、お茶と一緒にご馳走をお供えしました。
実家へ移動し、みんなでご馳走をいただきました。あれ!? お重箱じゃないの? って声がグソー(あの世のご先祖様)や読者の皆さんからも聞こえてきそうですが、ハイ、今年は、県産野菜がたっぷりの那覇の『食堂faidama』さんのオードブルにしてみましたよ。盆正月にシーミーに家族の年忌にありとあらゆる旧暦行事。沖縄では、冠婚葬祭問わずお重箱料理が登場することが多いので、時々はこうやって、お気に入りのお店のオードブルをお供えしたりするのが昨今の沖縄的風景でもあります。『ヒッチーナー(しょっちゅう)、三枚肉と天ぷらばっかりだったらウヤファーフジ(ご先祖様)の皆さんも飽きるサーネー』とか言いつつご馳走つついてます。
4月前半〜中旬のシーミーの季節が過ぎると、沖縄は本格的な夏を前に、大地が潤いに満ちる“うりずん”の真っ只中です。街路では、沖縄県花のデイゴが真っ赤な花を咲かせていました。デイゴが良く咲く年は、台風の当たり年なんていう迷信もありますが、さて今年はどうなりますことやら。
さて、沖縄の道路工事の標識も、最近は沖縄風のデザインや方言を使ったものが登場していますよ。『わじゃそーいびん』。直訳すると“技、しております”。つまり言うなれば“技術施工中”。すなわち、“工事中”ってことですね。
ご丁寧に『ゆたしくうにげーさびら』(どうぞよろしくお願いします)の看板まであると、工事で道が混雑していてもなんだか気分いいですね。
こちらは、糸満(いとまん)市で見かけた交通標語。『マブヤー(魂)落とすなスピード落とせ!』。沖縄では、ものすごくびっくりしたり驚くようなことに遭遇すると、魂が抜ける・魂を落っことしてしまうと言われています。マブヤー落とさないよう、ドライブはくれぐれも安全運転でお願いしますね!
さて、あまりのシュールさというか圧巻さに思わず、“タマシ(魂)脱ぎたん!”(魂脱げた=びっくりしたさ)。ご家族総出で畑仕事? と思いきや、なんとかかしファミリーではありませんか。こちら、南城市内で個人の方が手作りしているもので、季節ごとに服装や出で立ちも変わるので、通るたびにワクワクです。雨の日も多く、本土よりひと足早い梅雨を迎える沖縄を表しているのでしょうね。
すぐお隣のひまわり畑では、地元南城市のゆるキャラ“なんじぃ”のかかしもお目見え。お孫さんと一緒に野良仕事中のようです。
南城市には、沖縄の稲作発祥の地とされる場所があります。久しぶりに訪れると稲穂もすくすく。玉城(たまぐすく)にある『受水走水』です。さて、なんと読むかご存知ですか?
『受水走水』と書いて“うきんじゅ・はいんじゅ”と読みます。清らかな湧き水が流れ、聖地のひとつとして崇められ、県内各地からお参りに訪れる人も後を絶ちません。
シーミーも終わった数日後は、旧暦の3月3日。『浜下り(ハマウイ)』。女性たちは海水で身を清める日とされます。また、大潮の干潮が重なるこの日は、どこまでも遠浅の海で潮干狩りを楽しむ風習もあり、玉城の海でも、大勢の人たちが潮干狩りにいそしんでいました。
うりずんの野辺では、甘い芳香を放つ月桃(げっとう/方言名サンニン)の花も咲き始めました。他にもテッポウユリや段々花(だんだんばな/グラジオラス)の自生している姿が目を楽しませてくれます。
本島では主に南部でしか見られない、日本一小さな蝉“イワサキクサゼミ”も鳴き始めましたよ。本格的な夏到来を前に、野辺に海辺にみずみずしい生命力が溢れるこの“うりずん”の季節が私は大好きです。
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