”多良間ぴんだ”と”おと~り”の夜
”多良間ぴんだ”と”おと~り”の夜
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食べる
初回投稿日:2015.11.15
最終更新日:2024.03.27
最終更新日:2024.03.27
多良間島(たらまじま)に行ってきました。宮古本島から船で約2時間、39人乗りの小型機で約15分の離島です。「多良間の人からすると、石垣島や宮古島は離島じゃない!という感覚なんです」というたらまんちゅの言葉に深くうなづく、正真正銘の離島。宮古島と石垣島のちょうど真ん中あたりにあるこの島で、人情味あふれる酒宴と出会いました。
お邪魔したのは島で黒毛牛の子どもを育てる波平さん一家の食卓。主役は、かつてさとうきびの収穫や家の棟上げが終わった祝いの席で食べられていたという山羊汁です。
沖縄本島の山羊汁は塩味ですが、多良間島は味噌味です。
山羊料理店以外で山羊汁をいただくのは初めてのことでした。聞けば、多良間島といえば山羊。多良間の山羊を特別に呼ぶ「多良間ピンダ(ピンダは山羊の方言)」という言葉があるほど山羊で有名なのだそうです。それでも、というか、そもそも、というか、山羊の肉は島内でもなかなか手に入らない貴重品。手に入るときに買って保存しておいたという山羊肉がたっぷり入った貴重な山羊汁をありがたくいただきました。「どんどん食べてね!」とおかわりまで。一晩で二杯の山羊汁をいただくのもまた初めてのことで、元気になりすぎないか心配です。
山羊汁の隣には、お父さんがイジャリで突いてきたというタコとイラブチャーのお刺身。お母さんのひと手間で表面を炙ってあり、香ばしさとコリコリの食感が加わってお箸もビールも進みます。酔いが回ってだんだん遠慮もゆるんだところで、やはりここは宮古文化圏。おと~りが始まりました。
なんとこの日は泡盛ではなく、お父さんが誕生日にお友達からプレゼントされたというとっておきのウィスキーでのおと~り。「今日はこれを飲もう」と、15年もののウィスキーを焼酎の空きビンにドボドボ注ぎ、そこに水をドボドボ注いで、水割りのできあがり(笑)。外国産のウィスキーも、これでもう、多良間の酒です。
この日は、那覇で暮らす長男のKさんがお仕事で里帰りをしていたこともあり、咲き乱れる家族の会話も最高のおつまみ。「ぱなぱんぴん」という多良間島独特のおやつも登場し、何から何まで多良間スタイルなのです。
「昔は、海が荒れると1ヶ月船が来ないこともあった」という多良間島。もはや秘境といっていい正真正銘の離島には、人の手と心がつくりあげた文化が色濃く残り、旅人の記憶を染め上げる力が宿っていました。
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