“かわいい・楽しい・おしゃれ”から海洋プラスチック問題にアプローチ「TRUE BLUE」【古宇利島】

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初回投稿日:2024.06.14
 最終更新日:2024.06.18

“かわいい・楽しい・おしゃれ”から海洋プラスチック問題にアプローチ「TRUE BLUE」【古宇利島】 クリップする

“海洋プラスチック”をアップサイクルしてアクセサリーやアートに。「かわいい・楽しい・おしゃれ」から環境問題への関心の入り口を開く「TRUE BLUE OKINAWA 海洋プラスチックアート FACTORY & SHOP」を紹介します。

アップサイクルで“ごみ”をアクセサリーやアートに

アクセサリー

沖縄県の北部にある古宇利島(こうりじま)。

屋我地島(やがじしま)から続く全長1,960mの古宇利大橋を渡り、道案内の看板にしたがって小道を進んでいくと“海洋プラスチック”を素材にアクセサリーや雑貨、アート作品の販売やワークショップを行うショップ兼ファクトリー「TRUE BLUE OKINAWA 海洋プラスチックアート FACTORY & SHOP(以降 TRUE BLUE)」の建物が現れます。

外観

“海洋プラスチック”とは、ポイ捨てされたりきちんと処理されることなく河川などを通じて海へ流出してしまったプラスチックごみのこと。TRUE BLUEでは、ビーチクリーンで回収したりお客さんが持ち寄ってくれる海洋プラスチックに付加価値を加える“アップサイクル”を通して環境問題にアプローチする活動を行っています。
 

きっかけは沖縄の海で感じたちょっとした違和感

玉村さん

「沖縄の海が大好きで、沖縄という存在にずっと支えられてきたんです」と話すのは、TRUE BLUEの共同代表を務める玉村めぐみさん。

静岡県浜松市出身の玉村さんは、10年ほど前に石垣島をはじめ八重山(やえやま)の島々を巡ったことがきっかけで沖縄の海が大好きになりました。ところが毎年のように通う中で「海の中ってもっと鮮やかだった気がする」「ここってもっとたくさん魚いなかったっけ」と沖縄の海に少しずつ違和感を感じるようになったそう。でも当時は「難しくて退屈、誰かがやってくれること」と環境問題にはあまり関心を持っていませんでした。

海

そんな玉村さんの意識が変わったのは、ここ3〜4年のこと。大好きなうみ亀がビニールなどのごみをクラゲと間違えて飲み込んでしまうというニュースを知り、海洋プラスチック問題のことを耳にするうちに、海の中で自分が感じた違和感と今問題になっていることがリンクしはじめたのだそうです。

「それで自分でも調べはじめたんです、このままだとちょっとまずいかもって」。

海2

それまではどこか他人事だった環境問題が「このまま何もしなかったら後悔する」という思いに変わり、いま自分にできることをしようと浜松のビーチでのゴミ拾いや、エシカルなアイテムを取り入れる暮らしをはじめた頃、玉村さんはTRUE BLUEのもうひとりの共同代表である高橋歩さんと出会います。

ポスター

海が大好きで共通点もたくさんあったふたりは「難しいことや堅苦しいやり方では浸透しない」と、環境問題への取り組みについての考え方も一致していました。そうして、おもしろく楽しく「世界の海をきれいにする」ことをゴールにTRUE BLUEの活動がはじまりました。

“かわいい・楽しい・おしゃれ”を環境問題への入り口に

キーホルダー

店内に並べられたかわいいアクセサリーや雑貨は、言われなければそれが環境問題の要因になっている“海洋プラスチック”から作られたとは思えないものばかり。ひとつとして同じ模様がないランプシェードも元々は海を漂うごみだったもの。

照明

商品の他にも、店内を照らす繊細な照明は廃プラスチックから作られていて「ここにはごみしか飾ってないんです」という言葉が信じられないほど、アップサイクルによって洗練されたおしゃれな作品が空間を彩っています。

照明

またワークショップでは、アクセサリーやランプシェードなど、もの作りを楽しみながら海洋プラスチックごみや海のごみ問題について学ぶこともできます。

TRUE BLUEの役割は、“かわいい・楽しい・おしゃれ”からきっかけを作って「環境問題にまったく興味がないひとの入り口をカチャッと開けること」。お店を出るときにはきっとごみに対する見方や環境問題への意識が変わっているはずです。

ビーチクリーンは“素材あつめ”

ピースボート

TRUE BLUEで使っている海洋プラスチックは、毎月のビーチクリーンで回収したりお客さんが持ち寄ってくれるもの。また、2023年には「世界一周クルーズ ピースボート」とのコラボで、乗船者の方達と一緒に14ヵ国の寄港地でビーチクリーンを実施しました。

色分け

玉村さんにとってビーチクリーンは、ゴミ拾いという感覚ではなく“素材あつめ”。例えば、紫色は中々見つからないレア色だったり、同じ青でもいろいろな色の出方があったり、どれも同じではないため全て一点物の作品になっておもしろいのだそうです。

粉砕

粉砕

集まった海洋プラスチックは、1階の作業場で洗浄、色別に分類、粉砕機で細かく粉砕されます。さらに、プラスチックの素材によっては熱を加えると有害物質を発生するものもあるため、熱を加えても良いものなのか悪いものなのか、一手間かけて分類をしていきます。海洋プラスチックの性質に合わせて使う用途を分ける大切な作業です。

レコード

そして現在、海洋プラスチックを使ったもの作りの試みとして動き出したのが、音楽好きな人との会話がきっかけになったレコード作り。

海洋プラスチック問題には興味がないけれど、音楽好き、レコード好きな人はたくさんいるはず。同じレコードでも、音質が変わらずに海洋プラスチックから作られたものがあれば「こっちの方がかっこいい」となるはず。

こうやって、TRUE BLUEでは環境問題への入り口の幅を広げていっているのです。

アップサイクルがあたりまえの世界へ

シーサー

アップサイクルとは、不要になったり捨てられるはずだったものに価値を与え、アップグレードさせて別のものに生まれ変わらせること。

日々新しいものが生産されては廃棄されていく中で、使われているプラスチックの量は相当なものです。ただ、プラスチックの使用をゼロにすることは難しいとしても「海洋プラスチックでも作れるんじゃないか」と機転を利かすことがができれば、新たに生み出されるプラスチックの量も、ごみとして海に漂い続ける海洋プラスチックの量も、きっと減らすことができるはずです。

本

「アップサイクルという考え方がもっと一般的になって、海洋プラスチックが新たな“素材のひとつ”という認識になってほしいんです」。

海洋プラスチックをごみと捉えるか素材と捉えるかは、自分の見方ひとつ、工夫ひとつ。ちょっと見方を変えることができれば、消費の世界から循環の世界へ、ごみを宝物へ変えることができるのです。

さぁ、TRUE BLUEで、おしゃれに楽しく、環境問題の興味の扉を開いてみませんか?

【玉村さんの著書】
『TRUE BLUE(トゥルー・ブルー) 美しい海を、永遠に。』
玉村めぐみ (著)/高橋歩 (監修)/A-Works

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TRUE BLUE OKINAWA 海洋プラスチックアート FACTORY & SHOP

住所 /
沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利385
TEL /
080-4810-7460
営業時間 /
10:00〜18:00
定休日 /
水曜
P /
あり
Webサイト /
https://wds.world/trueblue

上村 明菜

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