沖縄観光情報:“音楽・店・人” from“最後のまちぐゎー”『栄町市場』

“音楽・店・人”  from “最後のまちぐゎー”『栄町市場』

post : 2016.08.20 18:00

 
変わりゆく、那覇。32万人からなる県庁所在地は、言うまでもなく大都会で、近年インバウンドの膨張もあってか、その度合いは顕著で急速、そして容赦ない。それでも、気まぐれに、“すーじぐゎー(沖縄の言葉で「小路」)”に入ると、昔ながらの風情に出逢えたりもする。やはりまだまだ“うちなぁ”だ。
 
 
那覇の、どこか懐かしいアジアの場末的な空気が、大好きだ(った。…かつては)。だが、ここ数年、その雑多な下町感が、目に見えるように失われている。10年程前、初沖縄の際に泊まったのは、那覇の、確か開南辺りのゲストハウス。今では近代的なマンションがオっ建ち、跡形も無い。それどころか、区割り自体が根こそぎ変貌し、景観そのものが全く別のものとなり、僅か10年前当時の面影は、1mmも無い。
 
その最たるエリアが、『桜坂』周辺ではないだろうか。暗く細く、どこに繋がるかも分からないすーじぐゎーに、いかにも…なスナックが立ち並ぶ。ゾクゾクするよな怪しさ満載の飲み屋街…も、今は昔。想像できない程の巨大外資系ホテルが下界を見下ろし、ピカピカに整備された広い道路には、わ(れ)ナンバーがびゅんびゅん往来。モダンという隙間風が、徐々に、そして確実に吹き込み、セピア色はどこにも見当たらなくなってしまった。
 
それから、開南周辺といえば、『農連市場』。この、うちなぁを代表する“まちぐゎー(うちなぁぐちで「市場」)”も、すでに再開発の運命に。さらに、我らが『牧志公設市場』も、移転計画が取り沙汰されて久しい。これらノスタルジックな“レトロうちなぁ”は、早晩、ロストするのである。跡形もなく。時代の流れとは言え、頗る寂しい。
 
しかし、それでもなお、たった一つ、希望がある。『栄町市場』だ。古き良きまちぐゎー的世界観を、今なおディープに&貴重に残す。それどころか、新しい店が次々に暖簾を構え絶妙に進化さえしている。
 
 
新旧入り乱れつつ、今なお賑わう、この“最後のまちぐゎー”を、少し前にどっぷり取材した。昼と夜でおよそ異なる表情が垣間見える、この魅惑の市場に、一週間程足繁く通った。仕事仲間と飲む時は大抵この街だが、ここまでねっとり張り付いたのは初めて。
 
 
静かに広がるワンダーな情景に、改めて感慨深し。中でも、印象に残ったのが、“音楽・店・人”という3つエッセンス。世に出ることの無かったアザーカットたちから、この、最後のまちぐゎー特有の、3つの匂いをお届けしよう。
 
 
【about 音楽】
栄町は何と言っても、音楽の街。それを強力に牽引してきたのが、魂のロックバンド【マルチーズロック】であることは論を待たない。その、地の底から湧き出るような糸満 モリト氏の日本人離れしたヴォーカルは、深いところに染み入る。
 
 
そして、もう一つ。【おばぁラッパーズ】は絶対に外せない、もう一つの顔。齢を微塵も感じさせないエネルギッシュなパフォーマンスが、聴衆を魅了する。
 
 
去る5月15日に開催されたイベント『栄町市場 熊本・大分震災支援チャリティーマルシェ』では、マルチーズやおばぁ達の他、多くのミュージシャンが思いおもいに栄町“愛”を表現していた。ちなみに、毎年6~10月の最終土曜日に行われる『栄町屋台祭り』では、彼ら・彼女らのステージを無料で満喫できる。ぜひ一度足を運んでみて欲しい。
 
 
【about 店】
それから、お気に入りのお店を幾つか。もちろん筆頭は、みんな大好き、餃子屋さん。『べんり屋 玉玲瓏(イウリンロン)』は、言わずもがなの栄町No.1店。日々18:00の開店前からできる行列で、この街の、夜のステージが開幕する。「焼」や「水」など、4種類の餃子の他、小籠包も絶品だ。
 
 
 
2000年オープンの老舗『栄町ボトルネック』は、この街の盛衰を間近で見てきた。というよりむしろ、常にその中心にいた大重鎮は、音楽とお酒という、コア・コンピタンスを形成してきた立役者だ。〆にいただく沖縄そばも去ることながら、マスターの朴訥な笑顔にホっとさせられる。
 
 
一番好きな店は、やっぱり『生活の柄』。2008年の移住後、初めて飲んだ思い出の店。あのマルチーズロックのモリト氏が店主で、屋号は、沖縄出身の詩人・山之口貘(やまのぐちばく)の詩を、高田渡が曲を付けて歌ったフォークソングより。音楽も一流ながら、料理の腕前も見事。運が良ければ、ギター生演奏を目撃できる。
 
 
『COFFEE potohoto』は、昼間のちょっとした休憩に立ち寄りたい。ローストチャンピオンシップで入賞した山田 哲史(やまだ てつじ)氏による一杯は、格別ながらも200円~という、栄町価格が素敵。店頭はいつでも地元民、観光客、外国人など様々な客層の笑顔で溢れる。
 
 
市場を取り巻くように増え続ける新興店舗も粒ぞろい。数ある人気店で、エスニックの『Chill Out』は、口コミで高い評価を得ている。オーナーシェフのコウ ヤスヒロ氏がサーブする本格タイ料理は、本場を食べ歩いた経験が随所に表現され、ツウをうならせる。
 
 
【about 人】
備瀬 武敬(びせ たけのり)氏は、栄町市場商店街振興組合の理事町を務める。10年ほど前に衰退しかけた、生まれ育ちった地元・栄町を、音楽イベントで盛り上げた第一人者。街を見つめ続けてきた想いは、誰よりも深く、熱いものがあった。
 
 
理事長の実弟である、備瀬 隆(びせ たかし)氏は、市場のど真ん中『備瀬商店』の店主でありつつ、栄町市場商店街振興組合の理事として汗を流す。沖縄ブームなるものがあったが、栄町には関係なく、独自の歴史を歩んできたと誇らしく語る。
 
 
そして最後は、おばぁラッパーズより、高良 多美子(たから たみこ)氏。通称“うしぃ”さんは、生家である八百屋&雑貨店『ハイサイ食品』の店主でもある。物価が安いのは今も昔も良いところよ!と、からからと笑う。女性ながら豪放磊落、文字では表現しえない素朴な魅力こそ、栄町の懐の深さそのものを物語っていた。
 
 
不可逆的に、移ろいゆく時間。そして変わりゆく大都市・那覇…。今日の世界にあって、古き良き昭和な牧歌的レトロうちなぁを、いつまでも望むのは、贅沢なのかもしれない。でも、だからこそ、この愛してやまない、最後のまちぐゎー・栄町に、寄り添っていたい、少しでも。変貌する時代の風景を、見続けていたい、すぐ傍らで。
 
 
 
 
沖縄CLIPフォトライター 小川 研(Qey Word)
 
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