連載/島の恵み、島の味 その20 豚肉 母から娘へ繋ぐ味 ~おでん~

連載/島の恵み、島の味 その20 豚肉 母から娘へ繋ぐ味 ~おでん~

Reading Material

食べる

初回投稿日:2014.12.03
 最終更新日:2024.08.30

最終更新日:2024.08.30

連載/島の恵み、島の味 その20 豚肉 母から娘へ繋ぐ味 ~おでん~ クリップする

琉球歴文化体験モニタープログラム

連載/島の恵み、島の味も気がつけば20回目。

そんな記念すべき回には、やっぱり沖縄の欠かせない食材を!

ということで今回は2回に分けて「豚」を取り上げることにしました。

 

沖縄では、豚肉は「蹄と鳴き声以外は全部食べる」と言われ

かつてはお正月のお祝いに豚を一頭絞めていた習慣があり、

いまだその記憶が残っている方も少なくありません。

 

今回は移住して間もない頃から、

家族ぐるみのおつきあいの

豚肉の名ブランド「紅あぐー」の生産者、

喜納農場へお宅訪問。

 

飼料から徹底したこだわりをもち、

愛情込めて育てている喜納農場の紅あぐーは、

高級食材としても知られ、県内外で人気です。

 

なんと今回は

生産者である喜納家のみなさまにご協力いただき、

沖縄の家庭料理の横綱ともいえる

「おでん」がどのように作られているのか、

拝見させていただくことが出来ました!!

 

沖縄でも、寒さを感じるようになる師走の季節、

温かい食べものが食卓に顔を出すようになります。


沖縄のおでん

 

初めて沖縄のおでんを食べたのは、2年近く前のこと。

 

東京で知り合ったウチナンチュの友人がお正月に来沖したとき、

実家で作られたおでんを持って我が家に遊びに来てくれました。

 

それまで沖縄のおでんは食べたことも無く、

「沖縄にもおでんがあるんだ~」と

あまりピンとは来ませんでした。

 

そして鍋の中を覗いてみると、そこにはなんと豚足が!!!

関東で馴染みのあるはんぺん、つみれ、ちくわぶの姿はどこにも

見当たりませんでした。。。衝撃。

おでんの具はほかにゆで卵、大根、昆布、こんにゃく、

厚揚げ、ちくわ、ソーセージなどが入っています。

でも、中身は違うけど、味は、もう旨い!の一言。

あじくーたー(こってり濃い口)なので泡盛が進みました。

 

「東京で何度か作ってみたけど

やっぱり実家のおでんみたいに

出来ないんだよね~」と

飲みながら話した友人の言葉を思い出します。

 

東京で試したくなるほどウチナンチュが恋い焦がれる沖縄のおでん。

喜納家のおでんは母・ともこさんが担当。


ともこさん

 

「娘から大根の面取りはピーラーがラクチンと教わったのよ」

 

と嬉しそうに語るともこさん。

 

去年嫁に出た喜納家の忍さん。

出産前まで、紅あぐーや紅豚を販売するネットショップの店長として

喜納農場をサポートしていました。

夏に初孫を迎え、喜びもひとしおの喜納家。

そろそろ、母秘伝のレシピを伝授するタイミング。

でも、なかなか恥ずかしくて教えて欲しいと言い出せない忍さん。


チマグー

 

おでんに使われる部位は、豚足です。

沖縄では「テビチ」と呼ばれますが、

テビチとは肩から足先までの呼び名。

そして足の先の部分を「チマグー」といいます。

喜納家のおでんはこのチマグーを使います。


チマグーをよく洗う

 

まず汚れを落とすため、

熱湯でチマグーをよく洗います。

 

喜納家の台所の驚きのポイント、それは鍋の大きさと多さ。

旧暦行事ごとに、親戚が集まり宴が繰り広げられ

たくさんの料理を一気に作るため

大きな鍋がいくつもストックされてます。

そして、それを温めるための

カセットコンロもいっぱいです。

 

出汁に使う鰹の削り節も、大きい袋を2パックを丸ごと豪快に使います。


鰹の削り節

 

汚れを落としたら大きい鍋に移して水をひたひたに入れ、

2時間ほど火にかけ、丁寧にアクをとります。

炊きあがったチマグーは、プリッとはちきれそうに膨れ上がっています。


炊きあがったチマグー

 

さきほどの鰹出汁、チマグーの茹で汁と合わせ

下処理をした大根、昆布、こんにゃく、厚揚げ、ソーセージ、ちくわ、ゆで卵の

順に入れて、再度火にかけます。

 

調味料は醤油、みりん、塩のみ。

鰹とチマグーの出汁を生かしたシンプルな味付け。

「家庭ごとに味が違うから、レシピなんてないのよ~」

と照れ笑いのともこさん。

調味料を鍋に回し入れ、弱火で蓋をして

コトコト3時間。煮込めば煮込むほど味がよくなるので、翌日のおでんは最高です。

 

沖縄のおでんのポイントとしてもうひとつ。

盛りつけ時に青菜を添えるのです。

季節によってエンサイ(空芯菜)やチンゲンサイ、レタスなど。

おでんの煮汁を小さな鍋に少し入れ、

さっとくぐらせてから盛りつけします。

そのままおでんの鍋に入れてしまうと

青菜の青臭さが煮汁に移ってしまうからとのこと。

ちょっとしたお母さんのひと手間。

これもまた伝授されていくのですね。


盛りつけ時に青菜を添える

 

じっくり炊き上げたおでんを綺麗に器に盛りつけて完成。

沖縄のおでんに欠かせないマスタードを添えて。

沖縄のおでんには、ツンとくる和がらしではなく、

酸味の効いた洋風マスタードがよく合うのです。


洋風マスタード

 

それぞれの素材に沁み込んだ鰹とチマグーの出汁。

喜納家の食卓ではまずチマグーからなくなるとか。

個人的には、美味しい出汁をギュッと濃縮した大根がオススメ。

 

今回の取材を機に、撮影の途中から

料理の担当が母ともこさんから忍さんへ

自然と変化していくのを見ながら、

 

「ああ、こうやって母から娘へと味が伝わって行くんだ」

 

と胸に熱いものがこみ上げてきました。

 

家庭の味の伝授

 

おでんの出来上がるまでに垣間みた家庭の味の伝授。

大切なバトンの受け渡しです。

日頃お世話になり続けている家族の、

じんわり溢れる家族愛に感謝なひとときでした。

 

 

次回も喜納家の食卓から

沖縄の豚料理では

超メジャーな、あの食材を使った

一品をご紹介致します。

お楽しみに!!

 

関連する記事

喜納農場

Webサイト /
https://kinafarm.com/

monobox(河野哲昌・こずえ)

同じカテゴリーの記事

琉球歴文化体験モニタープログラム