「沖縄の素顔を知りたければコザに行け」〈ゲート通り（沖縄市）〉

朝夕の通勤時間帯は沖縄にはおびただしい数の車が通り、それなりの慌ただしさが通りの表情を作る。そうかと思うと、10時を過ぎたあたりから15時までの日中は人も車も歩く姿はどちらもまばらで、ほのぼの、のんびり、という穏やかな雰囲気に包まれる。ゲート通りと呼ばれるこの通りの正式な名前は、極東最大の空軍基地として知られる嘉手納飛行場（かでなひこうじょう）と沖縄市泡瀬地区（あわせちく）を結ぶ県道20号線。かつてスペースシャトルの緊急着陸地に指定されていた嘉手納飛行場は、羽田空港のおそ二倍の面積を誇る。




飛行場に勤務するアメリカ軍関係者やその家族にとって、ゲート通り周辺は勤務明けの夕方以降あるいは休日の、絶好の息抜きの場だ。特に金曜と土曜の夜は、外国の街に迷い込んだかのような錯覚を覚えるほど別世界が出現する。「沖縄の素顔を知りたければコザに行け」という言葉がぴったりなコザの中でもゲート通りは、戦後の沖縄がくぐり抜けてきた歴史や沖縄が置かれている状況を知るにはうってつけの場所。しばらく足を止めているだけで、目や耳にそして心に入ってくる刺激を受け止めさえすれば、沖縄の光と影が浮かび上がってくるし、沖縄のことがさらに好きになるはずだ。




沖縄戦が終わったあと、沖縄で最も栄えたこのエリアには、アメリカ軍関係者をターゲットにした商店や飲食店、そして軍人が戦場に出かけたり本国に帰る際に持ち込んでくる装飾品や衣料品などを売る質屋が軒を連ねていたそうだ。今でもその名残はあり、質屋やインド人が経営する仕立て屋や、ストリップ劇場が営業を続けていたりする。



コザの他のエリアと同じように一時はこの通りも活気を失ったが、最近では若い世代が経営するバーやタトゥーハウス、アパレルショップ、手作りハム・ソーセージの店などがオープンし、新たな風が吹き始めている。ゲート通りがユニークなのは、ここを訪れる人が多様であることだし、幅広い年齢のオーナーが、チャンプルー感たっぷりに通りの表情をつくっているところだろう。




たとえば、元Aサインバーの「OCEAN」は1967年から営業している老舗の一つ。Aサインとは米軍が公認した飲食店や風俗店に与えられた営業許可証のことで、両親の代ではベトナム戦争に出かける米兵で賑わっていたそうだ。



店主のヤッシーさんはご両親からお店を引き継いだ第2世代のオーナーで、お客さんのほぼ90％は地元の常連客。国籍比率は日本人が90％以上を占める。母親からレシピを受け継いだタコスはファンが多い。また、気が向いたときに演奏してくれるナンバーは懐かしいフォークロックで、コザの街でのほろ酔い気分をいやが応にも高めてくれる。




隣にあるのはペストリーが人気のパン屋「ZAZOU」。1989年創業で、パリ周辺のこじゃれたブーランジェリーを想わせる店構えが通りに明るさを添えている。




ゲート通りをミュージックタウンのある国道330方面に歩いていくと左手にあるTESIOは、職人技と遊び心と地元愛がキラリと光る本格的なドイツ製法のハム・ソーセージを味わえるお店だ。沖縄の食材を使ったハム・ソーセージもあるのでお土産探しにもおすすめ。




通りの反対側に渡って再び嘉手納飛行場方面へUターンすると、今もなお営業をづけるストリップ劇場など、、昔懐かしいお店が並んでいる。





やがて見えてくるのが、ストリート系のファッションやグッズ、そして音楽がセレクトされた「Street Tailor」。アメリカやメキシコ、タイなどで直接買い付けてきたガラシャツや県内のアーティストのCDなど、ここでしか手に入らないものを見つける喜びがあるお店だ。




通りを再び渡って奥に入ると、街中のマイクロブルワリーの「コザ麦酒工房」がある。こちらで味わえる定番ビールは、「BIG BEACH」、「黒帯スタウト」、「三線ペールエール」、「アコークロー夕方エール」、「シーサーブラウンエール」、「台風IPA」など。いずれも沖縄にちなんだ名前が付けられています。街歩きを楽しんだ後、自家製のビールで喉を潤し、沖縄の味を楽しんでみてはいかがだろう。

コザでは、様々な映画の舞台となったコザの街を歩く「コザの街、映画の中を歩く旅」や夜の街歩きを楽しめる「ディープタウン コザナイト」などの街歩きツアーを一般社団法人 沖縄市観光物産振興協会（沖縄県）インフォメンションセンター (koza.ne.jp)が開催している。「自分たちだけでは不安！」という人はもちろん、コザの街を地元目線で深く知りたい人にもおすすめ。